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提言・アピール

“ホンモノ”の『働き方改革』への挑戦
~目指すべきは労働時間短縮だけではなく持続的成長~

2018.04.11update

一般社団法人関西経済同友会
企業経営委員会

 関西経済同友会 企業経営委員会(委員長=池田博之 りそな銀行 副会長)は、提言「“ホンモノ”の『働き方改革』への挑戦 ~目指すべきは労働時間短縮だけではなく持続的成長~」を取り纏めました。わが国では、今後僅か30年程度の間に、現在の大阪府の人口の約2倍 (約1,700万人)に相当する人口が減少し、そこに高齢化の進展が加わることで、大幅な労働力不足の発生が懸念される。このような状況の下、政府が推進する「働き方改革」は、社会全体で働き方を変えようとする大きな潮流を生み出している。一方で、「働き方改革」は日本社会に蓄積してきた社会問題を1つに束ねたキーワードとしての側面を持ち、その議論が「長時間労働の是正」や「ブラック企業撲滅」を起点に、労働時間短縮や業務効率化だけに矮小化されていることも否めない。
 「働き方改革」の名の下に労働時間短縮や休暇取得を指示するだけで、その目的が示されず仕事量自体も全く変わらない、労働時間短縮に伴う新しい仕事の方法も示されない、といった「働き方改革」の押しつけは、逆に働き手を疲弊させる。個人の努力による効率化や労働時間削減も大切だが、それだけで企業の抱える課題や社会問題を解決することはできないのではないか。

 以上の問題意識のもと、我々は多様な働き手が生き生きと働き、幸せの実感を通して、付加価値を高めるイノベーションの創出により企業の競争力強化や持続的成長を実現していくことこそが、日本の構造的社会問題を解決する「“ホンモノ”の働き方改革」であると考える。そして、そのために経営者・働き手・国は今なにをすべきかについて、次のように提言する。

【経営者への提言】
①持続的な成長への解決策としての「働き方改革」
✓“ホンモノ”の「働き方改革」実現に向けトップは覚悟を決め、本気の取り組みを
・「働き方改革」なくして持続的成長なしという強い危機感を持つべき
・副業・兼業等、異業種や企業外部へのアクセスでオープンイノベーション実現を
・働き手が「安心」して新しい事に「挑戦」できる風土への変革が必須

②働き手との緊密なコミュニケーション
✓経営者はこれまでの価値観を見つめ直し、働き手のモチベーションを引き出すべき
・「共通の理想」を再構築し、明確にそれを示し、共感の輪を作る不断の努力を
・一人ひとりの生き方を理解し、働き手が求める働き方をサポートする姿勢を
・「働き方改革」の目的や手段を明確に示し、働き手(管理職含む)もメリットがあると実感できる取り組みを

③働き方の多様化を支える自社にフィットした投資
✓①②を踏まえて自社に必要となる働き方の多様化に真剣に取り組むべき
・IT技術の進歩に伴うテレワーク、モバイルワークの実践を
・デジタル化(AI・ロボット等含む)による生産現場のプロセスイノベーションを
・多様な働き方に合った人事制度や評価方法、マネジメント層の教育等の見直しを

【働き手への提言】
①自立と自律の意識改革
✓AI等による雇用環境の変化も踏まえ、自立したキャリアオーナーシップを持つべき
・プロフェッショナルとしての高い意識を
✓柔軟で多様な働き方とアウトプット(成果)責任は表裏一体であり、働き手の自律が経営者との信頼関係の基礎になると意識すべき
・管理のための不要なマネジメントコストをかけさせない自律的な行動を

②自らの「働き方」についての積極的な発信
✓納得感のない“働かされ方”を受け入れるのではなく、自らが求める働き方を経営に発信すべき(自分の働き方を決めるのは、政府でも経営者でもなく自分)
・経営者との共感の輪を築くために、自らの働き方について本音の議論を

③「働き方改革」のメリット享受
✓副業・兼業や新しい働き方が自らにメリットをもたらすことを理解すべき
・自らの生き方にリターン(時間・家族・所得)が得られるという認識を
・自己研鑽、仕事外の経験によるスキル向上で、自らのバリューアップを

【国への提言】
①社会全体が人材育成を行う仕組みの整備
✓企業・業界を超えたリカレント教育等、多様な働き方の中でプロフェッショナルな人材を育成する枠組みを整備すべき
・大学、職業訓練等のネットワーク化により学びたいことをいつでも学べる仕組みを

②働きたい人が安心して働ける社会整備
✓企業努力では対応できない社会制度・社会保障の充実に取り組むべき
・待機児童、介護、シニア等様々な事情を抱える働き手が安心して働ける枠組みを
・副業・兼業、フリーランサー等が活躍できる社会制度、社会保障の枠組みを

以上

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