提言・アピール

中堅中小企業のアジア戦略
~アジア進出成功への鍵~

2012.04.09update

平成24年4月
一般社団法人 関西経済同友会

中堅企業委員会<第2分科会>

  • 21世紀はアジアの時代といわれて久しい。実際、世界のGDPに占めるアジア(日本以外)のウエイトは14%と10年強で2倍となっており、一昨年には中国がわが国を追い抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国の座を射止めた。アジア開発銀行では、2050年には52%と全世界の過半を占めると予想している。
  • 高度成長期以降における産業界の対アジア史を紐解くと、当初は自動車、電機など主要製造業を代表する大企業が尖兵となっている。米国や欧州圏内への進出との対比では、現地市場開拓という目的は副次的で、アジアの低廉・良質な労働力に注目したコストダウン型の進出が主流、製品も日本への逆輸入や第三国への輸出に振り向けられることが多かった。この傾向は1985年のプラザ合意後の円高局面で加速している。ところが、さらに時代を下ると、食品、医薬品、トイレタリーなど内需型製造業の進出が目立つようになり、コストもさることながら、現地需要の取り込みが主になってくる。進出業種も多様化し、小売・卸、運輸、外食、不動産、サービスなど非製造業にまで波及しつつある。こうしたなか、かつては大企業が中心であった企業規模も裾野が拡大、いまや中堅中小企業にとってもアジア進出は珍しいものではなくなっている。足元でのさらなる円高の進展、わが国におけるデフレの長期化、少子高齢化の加速もこうしたアジア進出ブームを促進する要因となっている。
  • 無論、成長するアジアの需要を取り込む、あるいはアジアとの関わりのなかでわが国の成長戦略を模索する場合、アジアの国々からの「インバウンド」(導入)、具体的にはビジネス人材、観光客、留学生、などを日本に呼び込み、労働力として活用する、あるいは急激に拡大する購買力を国内に移転させる(内需化)という視点も欠かせない。実際、当分科会における当初会合でもそのような意見はあった。「インバウンド」がビジネス、経済・産業政策の面で重要である事は間違いないが、当分科会では議論の拡散を避けるため敢えて対象外とし、アウトバウンド:アジアへの進出に絞って提言をまとめることとしている。
  • なお、本提言でいう中堅中小企業とは中小企業基本法で定める狭義の中小企業(注)に限らず、大企業(一般には資本金10億円以上)以外の企業、という意味で使用している。
    企業規模別の統計ではデータの制約から、狭義の中小企業では括れないものを使用せざるをえなかった点をお断り申し上げる。
    (注)中小企業基本法第2条では「資本金」、「常時雇用する従業員数」のいずれかが以下に該当するものを中小企業者としている。①製造業・建設業・運輸業等:資本金3億円以下、常時雇用従業員数300人以下、②卸売業:同1億円以下、同100人以下、③サービス業:同5,000万円以下、同100人以下、④小売業:同5,000万円以下、同50人以下。99年の同法改正により、資本金基準が引き上げられるとともに、業種区分が一部変更された。
  • また、「アジア」という場合、広い意味では中東諸国等西南アジア、旧ソ連圏の中央アジア諸国等も含まれるが、ここでは東アジア、東南アジア、インド及びその周辺地域を念頭に置いている。

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