提言・アピール

新しい時代の日本の防衛のあり方
~次期防衛大綱に望む~

2010.11.12update

平成 22 年 11 月 12 日
社団法人 関西経済同友会

安全保障委員会
委員長 小椋 昭夫

わが国は、日米安保体制の枠組みの中で、専守防衛政策を堅持し、平和と繁栄を享受してきた。しかし、北朝鮮の核武装化や中国の軍事力拡大など昨今の北東アジア情勢を踏まえると、新たな時代状況に応じたわが国の防衛のあり方が求められている。
関西経済同友会は、政府が現在策定中の次期防衛大綱に対して、以下4項目について提言する。この提言を次期防衛大綱に反映し、日本が国際社会、とりわけアジアの平和と安定に貢献するに相応しい防衛態勢を構築されるよう政府に強く求める。

  • 集団的自衛権の政府解釈を変更すべき
    日米同盟はアジア地域全体の安定を維持する上でこれまで以上に重要な役割を担っている。今後同盟を深化させるためには、対等な立場で応分の責任を担う必要がある。我々はこれまで一貫して、集団的自衛権の行使を可能にすべきであると主張してきたが、政府は「国際法上の集団的自衛権を有しているが、行使することは憲法上許されない」という見解を堅持してきた。
    しかし、北朝鮮の核・ミサイルという現実的な脅威が出現していることなどを踏まえると、日本の安全保障の基軸となる日米同盟をより有効に機能させるために、集団的自衛権行使を可能にする政府解釈の変更を行うべきである。
  • 「自衛隊海外派遣恒久法」の成立を急ぐべき
    国際社会では、インド洋で行った海上自衛隊の給油活動のように自衛隊による国際貢献活動が求められる事案が今後も発生することが想定される。複雑化する国際情勢の中で、実効性と機動性を兼ね備えた国際貢献を継続的に実施していくためには、国際貢献の根本に立ち返り、自衛隊の海外派遣のあるべき姿を議論した上で、国際平和協力活動を可能にする基準を定めた恒久法を制定すべきである。恒久法の制定は、自衛隊が継続的に海外活動に従事し、世界の平和に貢献するというわが国の明確な存在感を示すことになる。
  • 武器輸出三原則等の弾力的運用を
    1976年、三木武夫総理が武器輸出に関する政府統一見解として、「三原則対象地域以外も武器の輸出を慎む」という旨の事実上の全面輸出禁止を表明した。これ以後、わが国は、日米間の弾道ミサイル防衛共同開発などの特殊なケースを除き、この方針を堅持してきた結果、国際共同開発に参加できず軍事技術の高度化に取り残され、単独開発に起因する武器調達コストの増加や国内の防衛関連産業基盤の維持が難しくなるなど様々な弊害に直面している。
    この状況を克服するためにも、武器輸出三原則等の弾力的運用を行い、技術開発環境を広げ、軍事技術の高度化へ対応する新たな原則を構築することを求める。それが基盤的防衛力の強化にも資すると考える。
    もちろん、武力紛争を誘発する可能性を高めるような武器等の輸出は厳に慎むべきことはいうまでもない。
  • 海洋国家日本に相応しい態勢を整備すべき
    近年、中国は目覚ましい経済発展を背景に海洋活動の範囲を東・南シナ海、太平洋にまで拡大するなど、覇権主義的な動きを強めている。特に、第1列島線を越え、日本近海へも活動範囲を広げている。領土防衛、領海拡大による海洋権益の確保・海上交通の保護などがその目的と言われており、今後もこうした動きが拡大される恐れがある。
    こうした状況に対応するためにも、四方を海で囲まれているわが国としては、自国で海域を守るため、離島、島嶼部の安全確保をはじめ、海洋国家日本に相応しい態勢を整備することが不可欠である。

以上