提言・アピール

第64回西日本経済同友会大会共同見解

2006.10.19update

2006.10.19
西日本経済同友会

  1. 基本認識
    アジア・太平洋地域は、世界の人口の半分を超える38億人が暮らし、世界のGDPの二分の一を生み出す一大成長圏域である。しかし、多様な価値観に満ち、多様な発展段階にある国々が共生するこの地域には、その一方で未成熟な民主主義、経済格差の拡大、軍事的緊張の高まりなど、不安定要因も多く内在している。
    このような、成長という光と不安定さという影を併せ持つ、アジア・太平洋地域の安定的・持続的な繁栄は、日本の国益はもとより、世界の安定や発展にとっても重要であり、アジアのリーダーとしての日本の果たすべき役割が問われている。
  2. 西日本からの提起―日本の果たすべき役割
    1. 外交・安全保障
      中国の軍事力強化、歴史認識問題、尖閣諸島や竹島をはじめとする領土問題など、アジア・太平洋地域を取り巻く国際情勢は不安定さを増している。とりわけ北朝鮮のミサイル発射に続く今回の核実験は東アジアに重大な危機をもたらし、新たな安全保障の枠組みの必要性を迫ると同時に、日米同盟の真価を試す機会ともなっている。日本はアジア・太平洋地域の平和と安定に向けて、戦略的な外交・安全保障政策の構築が求められている。
      1. 中国・韓国との未来志向の関係構築
        アジアの将来を見据え、中国・韓国との未来志向の関係構築に戦略的に取り組むべきである。相互の理解と尊重を基本とした真の友好関係を構築するため、我々経済人も歴史に対する理解を深め、民間レベルでの日中韓の歴史共同研究を支援するなど、経済界としての貢献にも前向きに取り組む。
      2. 北朝鮮の核・ミサイル・拉致の早期解決
        北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題は、日本の国益を犯す看過すべからざる問題である。国民の生命・財産を守り国際社会の平和を維持するとの決意のもと、米国、中国、韓国、ロシアとの密接な連携を通じた断固たる対応により、一刻も早い解決を目指すべきである。
      3. 日米同盟の更なる深化と北東アジアの戦略対話
        アジア・太平洋地域の安定の根幹をなす日米同盟を強固なものとすべきであり、憲法改正も視野に入れ、集団的自衛権の行使に関する議論を深化させる必要がある。また、北東アジアに共通の利害を有する日・米・中・韓・露による「北東アジア戦略対話」など多国間対話の枠組みづくりを推進すべきである。
      4. 国連安保理常任理事国入り
        世界の平和と安定に貢献するため、わが国にとって国連安保理常任理事国入りは不可欠である。戦後60年間、平和国家として歩んできた日本の姿を正しく伝え、アジア諸国をはじめ世界各国の広範な支持を得るよう、官民合わせた周到な戦略をとらねばならない。国連改革にも積極的に取り組むべきである。
    2. アジア経済
      アジア・太平洋地域は、近年、中国、インドを中心に急速な経済発展を遂げ、将来に向けて世界をリードする大きな潜在力を有している。アジア・太平洋地域の安定的、持続的発展に向けた地域の産業競争力強化や経済連携の一層の推進が求められており、自由経済のリーダーたる日本には、その実現に向けての主体的役割が期待されている。
      1. 質の高いFTA・EPAの推進
        アジア経済を先導するため、FTA・EPAの戦略を再構築し、地域経済統合づくりにリーダーシップを発揮すべきである。質の高いFTA・EPAを推進するために、農業の構造改革など国内問題の克服にも前向きに取り組む必要がある。
      2. 東アジア共同体の構築に向けた取り組み
        将来的な東アジア共同体の実現に向けて、この地域に大きな影響力を有する米国との戦略的な連携を図りつつ、インド、オーストラリア、ニュージーランドを含むアジア太平洋に開かれた地域主義を目指すべきである。
      3. ODA戦略の再構築
        相手国の信頼や感謝を得られないODAから、顔の見えるODAへと戦略を再構築すべきであり、日本が得意とする省エネ技術や農業技術をODAに活用するなど、民間の力を活かしたODAを推進し、アジアの社会経済の発展に貢献する。
    3. 日中関係
      経済大国として成長した中国は、一方で格差問題、民主化の遅れ、資源エネルギー・環境問題など社会・経済の歪みとも言うべき多くの問題を内包している。中国の安定的かつ健全な発展は中国一国のみならず国際社会の安定と発展にとっても重要である。日本には、共通の利害を有するパートナーとして、また課題解決の方策を有する先進国として、中国との対話を前提とした積極的な貢献や、国際社会への働きかけが求められている。
      1. 中国の民主化に向けた取り組み
        中国の安定的発展のために、自由と民主主義を共通の価値観とする国々とともに、中国の民主化への努力に積極的に協力・支援すべきである。
      2. 中国の責任ある行動を促すための国際協調
        米国など国際社会と協調して、中国が経済大国としての自覚と責任を持ち、貿易不均衡、人民元改革、知的財産権保護等の経済問題を解決するよう、強く働きかけるべきである。
      3. 資源エネルギー・環境問題への貢献
        省エネ・環境技術先進国として、官・民が連携して、中国の資源エネルギー・環境問題の解決に積極的に貢献する。
  3. むすび
    安倍総理が就任直後に中国を訪問し、首脳会談において、政治と経済を車の両輪に両国の関係強化を図ることに合意したことを高く評価するとともに、経済界としても、アジアとのより良き関係構築に向けた安倍政権の政策を強く支持する。
    私たちは、日本の文化・文明の普遍的価値に根ざしたソフト・パワーの発揮や、アジアとの地域間・都市間交流を通じての多層的な信頼関係の構築など、アジアとの関係が深い西日本の地域、経済界として、それぞれの特色に応じたアジアとの関係深化と相互発展に努めていく。

以上