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提言・アピール

第 42 回関西財界セミナー 合意事項

2004.02.06update

平成 16 年 2 月 6 日

わが国は、経済の長期低迷の中、政治・経済・社会の全ての面で将来への展望を拓けず、強い閉塞感に陥って来た。今、個々の企業の自己革新への取り組みにより、長い混迷と停滞を打破する兆しが見えつつある。しかし、この歴史的転換点にあって、これでただちにわが国経済が本格的に回復し、持続可能な成長軌道に乗る抜本的な構造転換につながるとは言い難い。その大きな要因として、いわゆる日本型社会主義とも揶揄される中央集権・官主導のコントロールシステムを打破出来ず、また企業革新がいまだ産業界全体の大きなうねりとなっていないことがある。

第42回関西財界セミナーでは、このような問題意識のもと、『新しい活力を関西から~自由主義経済と企業家精神の再構築~』をメインテーマに、国・地域・企業が取り組むべき課題を明確にするなど踏み込んだ議論を行った。わが国の将来を決するターニングポイントにある今こそ、われわれは、自由主義経済と企業家精神の原点に立ち返り、関西がわが国の創生を牽引するという意志と気概を持って、自ら変革に挑戦し行動することを、ここに決意し宣言する。

  1. 来るべき社会における国、地域、企業・経営者のあり方
    1. 国のあり方
      1. 抜本的な構造改革の断行と政府のリーダーシップの発揮「官から民へ」「中央から地方へ」という小泉内閣が掲げる構造改革の理念は、支持する。ただし、その進捗状況はスピード、内容ともに、十分とはいえない。企業家精神を原動力とする自由主義経済を再構築し、デフレ経済の克服に十分留意しつつ経済を持続可能な成長軌道へ乗せるためにも、政府がリーダーシップを発揮し、抜本的な構造改革を早急に断行することを求める。
      2. 特色ある成長産業の創造にむけた科学技術戦略の推進
        わが国が国際競争力を強化するには、国としての総合的な科学技術戦略が不可欠である。そのため、省庁横断的な政策の立案・実行と、従来の枠組みを超えた産・学・官の多様な連携や、科学技術を駆動力とする地域経済発展のための施策の立案・実施を求める。
      3. アジアとともに成長する枠組みづくりにむけた国家戦略の策定・実践
        アジアが安定的に発展する枠組みをともに創り出す観点から、FTAの締結など貿易・投資の自由化、金融・資本市場の育成、知的財産権保護、安全保障などの国家戦略の早期策定とアジアにおける強力なパートナーシップの構築を求める。
    2. 地域のあり方
      1. 地域の自立のための魅力・活力の創造と活用
        地域が真に自立するには、その前提として、魅力と活力ある地域づくりが不可欠である。そのため産業・技術・文化芸術の集積、広域インフラの整備・活用、地域の個性や強みの地域ブランドとしての国内外への発信など、総合的な発展戦略を描き、推進する必要がある。
      2. 分権改革の推進とそのための地方自治体改革の推進
        多様で豊かな活力ある地域社会を形成するには、分権改革の強力な推進とともに、自立的な地方運営主体の確立が不可欠である。そのためにも、行財政改革、政策立案能力の向上など、首長のリーダーシップにもとづく自己改革への取り組みを求める。
    3. 企業・経営者のあり方
      1. 企業家精神の発揮
        わが国の「新しい活力」の源泉は、企業・経営者である。経営者は、自己責任、自助努力と絶えざる自己革新のもと、新たなフロンティアを切り拓くとともに、国・地域の活力の新生に貢献していかねばならない。
      2. 企業の社会的責任
        経営者は、自由主義経済の原点に企業と自らの厳しい社会的役割・責任があることを自覚し、その信頼に応える経営を基本理念として実践し続けなければならない。
      3. 新たな企業と個人の関係の構築
        自立型社会では、他に依存しない逞しさが求められる。企業にあっては、社員一人ひとりが主体的に企業・社会での生き方を選択する自立したパートナーとしての関係を基本とする人材育成・雇用・人事制度を構築しなければならない。
  2. 『新しい活力を関西から』の実現にむけて
    変革にむけ、関西経済界は、スピードを上げ取り組む。特に、グローバル化の進展にともない、ますます重要性を増すアジアを念頭におき、関西の存在意義を高めることを目標として、次の7項目を重点に、その早期実現を強力に推進する。
    1. 産学官連携の推進による先端技術の産業化・集積と新たな展開
      IT、バイオ、ナノ、ロボットなど関西の潜在力を活かした特色ある成長産業の創造・集積を図るとともに、それら先端技術の融合を推進し、新たな技術、ビジネスモデルの創出に取り組む。
    2. 官民の協力、広域連携による企業誘致と集客観光力の強化
      より多くの人や企業をひきつける魅力ある関西とするため、地域・都市の個性や強みを生かしつつ、官民の協力と地域の連携による強力なネットワークのもと、昨年設立された関西国際観光推進センターなどによる広域的プロモーション活動を強化する。
    3. 関西国際空港の活用促進と2期事業の推進
      開港10周年を迎える関西国際空港は、重要な基幹的インフラである。利用者の利便性を高め、国内はもとより、アジアの国際拠点空港となるよう、2期事業の2007年の使用開始にむけ着実な整備を図る。また、関西国際空港を最大限活用するため、官民あげた総合的なプロモーション活動などにより、経営基盤と国際競争力を強化する。
    4. スーパー中枢港湾の実現
      アジアにおける国際物流拠点としての競争力確立のため、関西国際空港整備とあわせ、大阪港・神戸港を一体化したスーパー中枢港湾の実現にむけ、官民一体となって強力に取り組む。
    5. 道州制特区を活用した関西での分権改革の早期実現
      分権改革を関西が先導できるよう、今後、関西分権改革研究会をさらに強化充実し、本格的な関西州の設立にむけ具体的なモデルを提示する。その関西モデルの早期実現のステップとして、道州制特区を促進する。
    6. 梅田北ヤード開発の早期具体化の推進
      梅田北ヤード開発は、関西再生の起爆剤にとどまらずアジアの中核としての地域パワーの確立につながる。早期具体化への取り組みを官民連携のもと強力に推進する。
    7. 地域に対する企業理念の確立と行動
      地域の発展は、産業によって大きく支えられており、官民挙げてその振興に総力をあげねばならない。しかし同時に、企業も地域から受けている恩恵を十分認識し、企業中枢機能の配置などに当たっては、地域との共生、地域への貢献を常に念頭におき行動する必要がある。
      このような観点から、自らと関西のアイデンティティーを再構築するため、企業経営者有志による「関西ふるさと懇話会(仮称)」の設置ならびに関西の発展と競争力強化に貢献した企業を顕彰する「関西財セミ賞(仮称)」の創設を検討する。

結び ~ナショナルコンセンサスの形成と政治・行政・企業・市民が一体となった取り組みを~
今改革に求められるのは、いかにスピードを上げ実行し、成果に結実させるかである。そのためには、それぞれが自己の利害のみに拘るのではなく、共通の目的・ビジョンにむけ、連携・協働する社会の形成が不可欠である。自由主義経済下にあっては、自立した一人ひとりの参画により、初めて健全な社会が成立する。われわれ関西経済界は、来るべき新たな社会の構築にむけ、民の立場からその先頭に立って、ナショナルコンセンサスの形成とわが国の改革に寄与するための活動をさらに強力に推進する。

以上

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