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提言・アピール

財政再建に向けて
~健全な危機感を共有し、歳出を抑制しつつ、公平性のある社会保障制度の構築を~

2017.04.04update

平成29年(2017年)4月
一般社団法人関西経済同友会
経済政策委員会

わが国の財政は、歳入の半分近くを借金に依存し、政府債務残高は名目GDPの200%超と、先進国中際だって厳しい状況にある。歴史的な低金利環境の下で、財政運営はかろうじて成り立っているが、一旦金利が上昇すると、財政のみならず経済・金融が連鎖的に悪化するおそれがあることは、先の欧州債務危機が示した通りである。 財政再建は、歳入拡大と歳出削減のバランスをとる必要があるが、政府が昨年6月に消費税引き上げを延期したことを踏まえると、まずは歳出拡大に歯止めをかけるべきであり、一般歳出の約3割を占める社会保障費の抑制が不可欠である。とりわけ、医療、年金、介護の中で伸びが大きい医療費については、膨張の一因である過剰医療/過剰診療の是正が急務である。また、支出額が最も多い年金については、シニア世代を支える現役世代の人口が減少する中、世代間格差という構造的な問題を抱えている。さらに、昨今では経済統計が経済・社会の構造変化を適切に把握せず、実態との乖離を指摘する声が増加している。景気の実態を適切に把握することで、歳出のムダを排除し、限られた予算を最大限活用すべきである。当委員会では、これらの課題を踏まえながら、財政再建に向けた提言を以下の通り取りまとめた。

【提 言】
「財政再建に向けて ~健全な危機感を共有し、歳出を抑制しつつ、公平性のある社会保障制度の構築を~」

 ① プライマリーバランス黒字化に向けた歳出・歳入改革の断行
・歳出の総額を抑制する法的枠組みの構築、財政を監視する独立機関の設置
・社会保障費の削減~医療費の削減(現行の点数の見直し、薬価の更なる適正化、AIを活用した診療、後発医薬品の普及率向上、予防医療の推進)、高所得年金受給者に対する給付削減(②参照)、介護費用の抑制
・消費税率10%への引き上げ確行と更なる税率引き上げ検討、ストックへの課税強化(海外資産・相続資産等)
② 公平な年金制度の構築による世代間格差の是正
・現役並みの所得がある年金受給者に対して、公平な年金課税の実現(公的年金等控除の廃止)
・高所得年金受給者に対する給付額削減(世代内格差の是正にも寄与)
③ 適切な政策運営のための統計の精緻化
・変化する社会構造への対応~ネット取引、越境EC、シェアリングエコノミー等の実態把握
・インバウンド需要の把握~インバウンド関連統計の拡充(地域別消費、訪問ルート等)
財政状況は深刻な状況にあると言われて久しいが、なかなか抜本的な改革に踏み切ることが出来ないのは、財政の現状について、国民の間で危機感が共有されていないことも大きい。また、最大の歳出項目である社会保障費は、単に給付を削減するのではなく、公平性のある社会保障制度を構築することが最も肝要である。痛みを伴う改革の実行は容易ではないが、国民の間で「健全な危機感」を共有し、公平性を確保しつつ、国民が広く痛みを分かち合うことが出来れば、財政再建に結びつくと確信している。  

提言・アピール

経済政策委員会提言170404