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提言・アピール

65 回西日本経済同友会大会 共同見解
「日本を今一度洗濯いたし申し候」

2007.10.19update

2007.10.19
西日本経済同友会

  • 現状認識
    日本は、戦後最長の景気回復期にあり、ようやく未来への明るい展望を持ちうる状況にある。しかしながら、この成熟期の繁栄の下で、多くの国民は、年金、医療、介護など社会保障制度に大きな懸念や不安を抱いている。行き過ぎた市場経済主義、過度の効率優先によって都市と地方、官と民などの間に「格差」が生じ、社会的な許容限度を越え始めている。さらに官民を問わず、欺瞞、無責任、傲慢、利己主義が横溢している。社会の多くの課題が顕在化する一方で、元来日本社会が持っていた復元力、免疫力が急速に低下しているように見える。
    「地域の再生」の観点からみると、首都圏へのヒト、モノ、カネ、権力の過度の集中が、多くの地方をますます疲弊させている。従来の公共投資依存型の経済構造からの脱皮に苦しむ地域では、賃金水準、雇用情勢が低迷して、社会サービス機能にも支障をきたすところもある。また、こうした過度の集中は、過密大都市と地方の双方の住民の安全・安心、環境保全など、生活の質の低下のみならず、国家安全保障の観点からみて、極めて重大な危険性をもたらすものである。ヒト、モノ、カネ、権力を、国土に分散することが、国民の総合的な生活の質、安全・安心の向上と、国家の安全保障上、適切かつ有効である。
    地方の農業、林業、水産業、中小企業などの当事者は、グローバル競争の厳しい状況に日々直面し懸命に対応しているが、地方経済の疲弊は加速している。
    その半面で、中国はじめアジア各国は、急速な成長の負の部分として、地球温暖化、環境汚染など、さまざまな厳しい課題を抱えている。日本は、国際的な役割として、環境保全、省エネルギーの技術を用いて、アジア各国の環境問題の解決に貢献することが強く期待されている。
    戦後、日本はアジアの成長モデルとして、アジア各国の発展を先導してきた。今後は、成長と環境の調和、地域間や階層間の調和を図り、新たなアジアの成熟モデルとして、各国との協調を目指し、その繁栄に貢献することが要請されている。

  • 中央集権から地域主権への抜本的改革を
    われわれは、「日本を今一度洗濯いたし申し候」と書いた坂本龍馬の気概に触発されて、「この国のかたち」の原点を問い直す議論を行った。明治以来の中央集権体制が行き詰まり、今こそ、地域主権が大胆に行われなければならないと考えたからである。
    わが国は、今、重大な岐路にある。小泉政権以来の構造改革路線を継続することができるか、否かの選択を迫られている。行財政改革、税制改革、社会保障制度改革、公務員制度改革などの構造改革は、未だ道半ばである。それどころか既得権にしがみつき税金を蚕食する、政治と官(行政)の抵抗はむしろ激しさを増している。
    構造改革は、グローバル競争と人口減少の下で、日本が成長力を高めて財政再建と国家・社会の繁栄を両立させるためには、避けて通れない道である。
    日本の成長力の強化と国力の底上げのために、中央と地方の役割分担を抜本的に見直す必要がある。中央集権から地域主権への抜本的改革と東京一極集中の弊害打破によって、各地域が、日本の成長の担い手となるように、活力を発揮しなければならない。その際、単に効率や経済性だけを物差しとして価値判断するのではなく、国民生活の安全・安心、さらに環境保全など無形の、本質的な価値をも重視しなければならない。
    十分な議論を喚起して、国のかたちを整え直し、国民の生活の質を上げる目的のために、地域主権型道州制の早期の実現を目指したい。その過程において、中央省庁の組織の徹底した簡素化、公務員の徹底した削減などが不可欠である。
    当面、国は、「地域の再生」のために、従来型の全国画一的バラマキ政策に走るのでなく、自立・自助の精神と創造性をもった各地域こそが、それぞれの特色を活かした経済発展戦略を打ち出せるように、制度改革を直ちに行うべきである。
    つまり、「自分たちのことは自分たちで決める」ことができる仕組みを作ること、すなわちそれぞれの地域が自らの工夫や行動を起こせるように、許認可、歳入・歳出などの各分野で地域の権限を拡大し、地域の企画立案力、政策実行力を強化することが重要である。各地の企業と個人が主役となった「地域の再生」のためには、活動基盤となる地方のITインフラと交通インフラの整備を急がねばならない。
    以上のことを、福田新政権に対して強く求めたい。これらの方策の実現過程を通じて、日本は成長一辺倒から成熟化社会へと前向きなパラダイム転換を成し遂げ、アジアの範となる成熟モデル国家として生まれ変わることができると信ずる。

  • われわれの決意『懐深さ、厚み、奥行きのある国づくり』に向けて
    今一度、われわれ西日本経済同友会メンバーは、主体としての各地域の重大な責任と自立の必要性を強く自覚し、中央集権から地域主権への抜本的改革を後押しする国民的なうねりを作り出したい。
    その国民的なうねりによって、まさに地方があってこそ都市圏が栄え、都市圏があってこそ地方も栄える、その双方の存在とバランスなくしては、国は奥行きを持てないという相互補完の基本的認識を、広く日本人が共有して、真の意味で、再び、『懐深さ、厚み、奥行きのある国』を目指すことができる。我々は、自然と調和する人にやさしい社会、同時に、産業と文化が発展する社会を希求する。
    地域は、企業と連携して固有の「得意なもの」を大切に磨き上げ、社会の底力を強化し、地域再生を果たさなければならない。
    われわれは、希望あふれる国を目指し、地域主権型道州制の早期の実現に向けて、積極果敢に行動する。

以上