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代表幹事コメント

新型コロナウイルス - 緊急事態宣言延長に際して ~回復から取り残される日本経済~

2021.05.07update

一般社団法人 関西経済同友会
代 表 幹 事  深野 弘行

  • 本日、政府は、5月11日に期限を迎える緊急事態宣言を5月末まで延長すると決定した。2週間の潜伏期間を考慮すれば、適用から2週間経過していない時点で、その効果を見極めることは難しいと当初から想定されていた。また、大阪・京都・兵庫においては、4月5日から緊急事態宣言適用前まで、まん延防止等重点措置が適用されていたにも関わらず、今なお感染拡大に歯止めがかかっておらず、措置を宣言前のレベルに戻す状況にはない。
  • 今回の宣言により一定程度の人流抑制効果があったとされているが、感染拡大抑制にどの程度寄与したのか、充分な効果が得られたのか、エビデンスに基づく分析は明らかにされていない。また、今回の延長に際して、百貨店など大型商業施設や大規模イベントに関する規制が緩和されるが、その論拠や感染防止への影響に関する科学的分析は、規制導入時と同様、今回も示されていない。真闇のなかで狙いを絞れないまま鉄砲を撃つかの如き対応が繰り返されているとの感を禁じ得ない。
  • 米国では、自宅や職場で採取可能なPCR検査キットによる高頻度検査、スマートフォンのアプリを通じた自覚症状の有無・検温データ把握と個人認証など、デジタル技術を駆使した科学的な感染防止サービスを提供する民間事業者が活躍し、観光・飲食・コンベンションなど人の移動や「密」を伴うビジネスは、コロナ時代の新常態への適応を遂げ回復に向かっている。英国では、数千人規模のイベントを開催し、感染に関する科学的な分析を行うなど、感染症対策全面解除に向けて動き出している。一方、我が国は未だ出口の光すら見えていないが、有効な対策を構築する時間はあったのではないか。
  • ワクチン接種においても、我が国は他の先進国の後塵を拝している。許認可など迅速な法手続きによる供給拡大とともに、ワクチン接種予約をめぐる混乱など現行の接種体制の問題点を早急に改善し、遅れを取り戻さなければならない。
  • 科学的分析とデジタル技術に基づく効果的な感染症対策の確立と、早期のワクチン接種普及が、今や経済回復と同義である。ここで、全力で遅れを取り戻す努力を怠れば、回復へと歩み始めた国々に大きく差をつけられ、世界の中で取り残され、禍根を残すことになる。

以上