資本主義の再構築と企業経営
~ビジネスを通して社会課題解決に挑む企業経営者への関西からの提言~
関西経済同友会 企業経営委員会(委員長=真鍋精志 西日本旅客鉄道株式会社相談役)は、2022年度から3年間の調査・研究の成果を、報告書「資本主義の再構築と企業経営~ビジネスを通して社会課題解決に挑む企業経営者への関西からの提言~」として取りまとめた。
1.本報告書の目的
近年、資本主義を持続可能性の観点から再構築すべきとの議論が世界各地で見られ、企業に対し、社会課題解決に従来以上に積極的な役割を果たすことを求める動きが顕在化。
本報告書では、企業がビジネスを通した社会課題解決に取り組んでいくための手掛かりとなるポイントを整理。ポイントは現役経営者の「生の声」から抽出したものであり、この「生の声」が本報告書の主体。
社会課題解決のビジネス化を通した成長を志向している企業経営者が、本報告書を参考に経営変革を実践し、「企業の社会的価値と経済的価値の持続的拡大を実現する」一助となることが、本報告書の目的。
2.経営環境の変化と経営課題
(1)日本企業の経営方針・経営姿勢の変遷
(2)現在の企業経営者が直面している経営環境
① 様々な社会課題解決への貢献が求められる時代 【経営者の声】
② 自社単独では社会課題解決が困難な時代 【経営者の声】
③ 人的資源を十分に確保することが困難な時代 【経営者の声】
3.ビジネスを通して社会課題解決に取り組むうえでのポイント
(1)社会の中での企業の存在意義(パーパス)を明確にしてステークホルダーと共有する
① 「パーパス」「経営理念」に基づいて事業を構築する 【経営者の声】
② 「パーパス」「企業理念」を拠りどころにして従業員の力のベクトルを合わせる【経営者の声】
(2)課題解決に必要なステークホルダーを巻き込む
① 「オープンイノベーション2.0」を通じて自社の技術や製品の価値を高める【経営者の声】
② 技術の社会実装に必要なルール形成に参画する 【経営者の声】
(3)イノベーションに必要な人的資源を確保するために投資する
① 採用活動 【経営者の声】
② 能力開発 【経営者の声】
③ 働きがい・働きやすさの向上 【経営者の声】
(4)社会課題解決の原資を確保するため、事業の収益獲得力を最大化する
① 既存事業の継続的な高付加価値化 【経営者の声】
② 新しい事業・市場への進出 【経営者の声】
③ 一部事業や資産の売却 【経営者の声】
4.ビジネスを通して社会課題解決に挑む企業経営者への関西からの提言
(1)「経営者の内なる「志」から出発する」
経営者は、どのような未来社会を実現したいのかという自らの内発的な思いに目を向け、その内なる思いをエネルギーにして、身近なところから行動を起こすべき。
(2)既存技術の深化と社会実装を重視する
経営者は、顧客のニーズや市場の変化に対応させる形で既存技術を深化させ、社会実装することに力を注ぐべき。
(3)「オープンイノベーション2.0」を成功させるために自社の強みを確立する
経営者は、一流と認められる魅力的な技術や製品などの強みを確立して、自社独自の価値を高めるべき。また、自社では持たない領域を明確にし、その領域で一流の相手と深い信頼関係を築くよう努めるべき。
(4)利潤を生み、再投資する
経営者は、自社の強みをマネタイズする仕組みづくりに注力し、事業が利潤を生むようになったら、設備や人に再投資して、より大きなイノベーションを仕掛けるべき。
5.終わりに~今後に向けて~
ビジネスを通した社会課題解決を志し、仲間を集めて協働してきた関西企業の経営姿勢や文化は、関西地域独特の土壌から生まれてきた関西の強み。
新たな「パーパス」を従業員主導で策定するなど、新たな「志」の立て方を検討することも、これからの経営者の課題。
経営者は、「パーパス」や「経営理念」を軸に自社ならではの強みの確立に努め、社会課題解決を継続的な収益・利潤の拡大につなげる仕組みづくりを進めるべき。
以上
一般社団法人関西経済同友会
企業経営委員会