<リスタート・ドリーム2050>若者が夢と希望を持てる2050年の日本の実現にむけて~挑戦と再始動を支える社会基盤への構造転換~
1.はじめに・背景
人口減少、技術革新、地政学的リスクが同時進行する中、日本は長期にわたる低成長と競争力低下という構造的課題に直面している。世界GDPに占める日本のシェアは低下し、IMD世界競争力ランキングでも順位が後退している。しかし問題は順位そのものではない。若者が「日本はこれからも成長する国である」という確信を持ちにくくなり、そのことが将来への期待や行動選択に影響を及ぼしている点に本質がある。若者は決して無気力ではなく、社会課題への関心や成長意欲は依然として高い。しかし、挑戦や再始動が自然な選択となりにくい社会構造が若者の挑戦を阻害している。本提言は、生活・仕事・社会制度を再設計し、挑戦が当たり前に選ばれる社会への転換を目指す。
2.課題認識 ~若者が夢と希望を持てない構造要因~
若者が将来に夢や希望を描きにくくなっている要因は、意欲や価値観の変化ではない。生活の基盤や仕事・キャリアの見通し、社会や政治の環境など、さまざまな制約が重なり、挑戦よりも現状維持を選ばざるを得ない状況が生まれている構造にある。この問題は、個人の判断や姿勢の問題ではなく、社会全体の活力低下を招く要因として捉える必要がある。
Ⅰ.生活基盤の不安定化
実質賃金の伸び悩み、物価上昇、社会保険料負担の増加により、若年層の可処分所得は圧迫されている。住宅費や奨学金返済など固定的負担も重く、収入の変動や一時的な離職などが生活不安に直結しやすい。失敗時やキャリア変更時の生活基盤の回復可能性が見えにくく、転職・起業・学び直しといった行動が抑制されている。
Ⅱ.仕事・キャリア構造の問題
新卒一括採用や総合職前提の雇用慣行のもとでは、学生時代の学びや専門性が職務と十分につながらず将来のキャリアパスや処遇も見えにくい。学び直しが賃金や役割に連動しない構造のもとで、「今動く意味が見えない」状況が生まれている。
Ⅲ.政治・経済・社会の在り方
政策形成が高齢世代中心で進む中、若者は社会を変える主体であるという実感を持ちにくい。行動しても社会や政策が変わらないという無力感、悲観的言説の拡散が将来への期待を弱めている。問題は無関心ではなく、「参加が意味を持つ」という実感が持てないことである。
3.基本的な考え方
本提言における「挑戦」とは、就職、起業、転職、学び直し、社内での新規取組など、自ら選択する前向きな変化を指す。学生、正規雇用者のみならず、非正規雇用者、自営業者、起業家、フリーランスなど多様な働き方・就業形態にある人々を含む。求められているのは行動が変わる条件を整えることである。そのために三つの柱、①安心の社会基盤、②人基軸の社会、③挑戦が価値に変わる仕組みを同時に機能させる。Passion(情熱)・Dream(夢)・Challenge(挑戦)・Action(行動)が循環するイノベーション型PDCAを社会全体で実装し、挑戦・投資・安心が好循環する構造を構築する。
4 提 言
<目指す姿(北極星)> 挑戦が自然な選択となる社会への構造転換
企業経営者や政府・行政を担う大人世代が「明るい2050年」となる夢と希望を自らの言葉と行動によって社会に示し、その実現に責任を果たす必要がある。未来の主体は若者であり、大人世代の役割は、若者に挑戦を求めることではなく、挑戦が不安なく選択できる制度・環境を整備することにある。一人ひとりの能力が最大限に発揮されることで人的資本の質が高まり、生産性の持続的な向上、日本の国際競争力と所得水準の向上などで日本経済の活力は着実に回復していく。その進捗を測る定量的指標の一つとして、2050年までにIMD世界競争力ランキングトップ5への復帰をストレッチターゲットとして掲げる。三本柱の実装を通じて、人材の挑戦回数の増加と人的資本の質の向上が実現され、その結果として生産性が持続的に高まった到達水準として位置づけるものである。
提言の柱① 一歩踏み出せる「安心の社会基盤」を構築(政府・行政)
政府・行政は、高齢世代中心の制度から現役世代の挑戦が不安なく選択でき、一時的離職が生活破綻につながらない制度を整えるべきである。
• 現役世代の可処分所得を圧迫する社会保険料と固定費の負担軽減に向けた制度拡充
• 自己都合退職者の給付制限期間の見直し
• 教育訓練給付の対象を経営者・個人事業主に拡張
• 起業準備期間の所得保障と資金支援の拡充、伴走型メンター人材の育成・制度化
提言の柱② 踏み出した挑戦を成長へと循環させる「人基軸の社会」への転換(政府・企業)
成功や活躍の形は一様ではない。起業や昇進に限らず、専門性の深化、地域貢献、家庭と両立する働き方など、多様な活躍を支援する社会へ転換すべきであり、教育段階から職業段階まで学び・挑戦・成長が循環する構造を整備することで、人的資本の質を持続的に高める必要がある。
• 職務・スキルと報酬の関係を可視化し、能力開発の成果が処遇に反映されるモデルを標準化する
• 企業内での学び直しメニューを拡充し、リスキリング支援と職務設計を連動させる
• 長期インターン制度を推進し、大学教育と実社会のつながりを強化する
• 教育段階から職業段階まで一貫して挑戦と成長が循環する仕組みを整備する
• AI・デジタル技術を人の代替ではなく能力の補完装置として活用し、専門性の深化や高付加価
値業務への転換を支援する
提言の柱③ 挑戦が価値に変わる政治・経済・社会の形成(社会全体)
挑戦が正当に評価され、行動と成果のつながりが見える社会へと転換すべきである。
• 挑戦・再挑戦を可視化し、人的資本活性化指標として制度化する(学び直し実施率、職務転換
率、新規事業参画率等)
• 意思決定層の多様性(年齢・専門性・ジェンダー等)を高め、挑戦を正当に評価する組織文化を
形成する
• 政策形成過程の透明化と成果検証(EBPMの徹底)
<おわりに>~提言に込めた思い~
当委員会は、2022年度から2025年度にかけて、講演会や委員会での討議、次世代との対話などの活動を続けてきた。4年間の活動の中で日本経済が直面している数多くの課題が浮き彫りになったが、それらの内容は非常に多岐にわたる。個別政策の積み上げではなく、挑戦を自然に選択できる社会構造への転換こそが共通基盤であるとの認識に至ったことから、若者が挑戦できる基盤づくりに焦点を当てた提言内容としている。生活基盤、仕事・キャリア、社会の在り方を再設計し、努力と挑戦が報われる環境を整えることで挑戦を“自己責任”とする制度設計から、“社会が支える”制度設計へ転換することが、本提言の核心である。企業経営者や政府・行政を担う大人世代が挑戦し続ける姿を示すことも重要であり、大人世代が夢と希望を語り、行動で示すことで、若者が「2050年は明るい」と実感できる日本を実現したい。
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以上





一般社団法人関西経済同友会
経済財政政策委員会