「科学技術基本計画」の具現化に向けた関西からの提言
関西経済同友会 科学技術委員会(委員長=新田恒治 松下電器産業 取締役)は、提言「科学技術振興に関する提言~「科学技術基本計画」の具現化に向けた関西からの提言」を取り纏めました。
提言要約
科学技術振興の基本的な考え方と視点
(1) これまでの効率性・生産性重視から「個の尊重」、「地球との共生」の視点への転換が必要である。
(2) 世界のフロントランナーとしての自覚を持ち、基礎研究と応用研究を有機的に連携させ、新産業創出、既存産業活性化を推進する事が重要である。
(3) 地域の産官学の研究機関や大学は、地域の産業・文化に根ざした特色ある研究開発を推進していくことが重要である。また、地域の持つ独自のポテンシャルを活用し、多極的に分散した地域間の相乗効果によって、我が国全体の科学技術をさらに高度化すべきである。
(4) 産業発展のためには研究成果を「知的財産権」として確立する必要がある。産官学による知的財産権確立への取り組みが、組織間の壁を越えた連携を生む原動力となり、研究資源の効率的活用、研究水準の総合的向上、新産業の創出等を促す「知的財産権立国」の実現を目指すことが重要である。
関西の果たすべき役割
(1) 関西には数々のニュービジネスを生み出した進取の気性あふれる風土に加えて、21世紀に産業の中核となる科学技術分野 (生命科学、新素材、情報通信など) に関連する研究開発拠点が集積している。これら数々のポテンシャルを最大限に活用し、独自性を活かした科学技術を育成・強化し、新産業を創出すべきである。
(2) アジア・太平洋地域の玄関口となるべく、情報の受発信機能を強化し、情報ハブ機能の強化を図るべきである。
(3) 環境やエネルギー問題など、全世界が直面する深刻で憂慮すべき問題に対して、環境保全やエネルギー創生など様々な分野で積極的に貢献・支援すべきである。
(4) 関西は、歴史に根ざした高レベルの文化・学術の基盤上に立ち、地域COE(センター・オブ・エクセレンス: 中核的研究拠点)を育成し、世界に開かれた「国際文化学術都市」の創造を目指すべきである。
提言
《組織の壁を越えた科学技術振興への取り組み》
◆民間の科学技術活動の活性化
①民間企業の研究開発力の強化と体質の転換・・・[産]
・民間企業の研究開発に対する財政支援と税優遇措置
・新産業創出を加速する規制緩和
・新産業創出の機会を増大する企業間協力(地場産業支援等) プロジェクトの推進と政府の支援
②世界に通用する科学技術系人材育成を目指し、大学のさらなる開放・・・ [学]
・熟年技術者の特命技官採用制度創設と、これを軸とした地場産業の活性化
・大学独自の自主的運用を行う知的財産権部門設置
・公立大学、公設試験研究機関などへの政府支援強化
③「科学技術姉妹都市(地域)」 提携による科学技術振興・・・[市民]
・文化的な交流を目的とした「姉妹都市」 提携の科学技術版
(例えば、中国の環境、米国の医療やベンチャーを推進する都市などとの提携)
・科学技術への市民 (小中学生を含む)の理解増進活動を産業界が積極的に支援
《重点3分野への投資と情報ハブ機能の強化》
健康・医療・福祉分野
◆地域COEの醸成とネットワーク化による交流推進
①地域の特色ある医療技術の強化と、地域間連携によるハイパー・メディケア・ネットワークの構築(例えば、関西文化学術研究都市の新世代通信網実験協議会(BBCC)の実験ネットワークの拡大、WHO神戸センターとのリンクなど)
②遺伝子(ソフト) とタンパク質 (ハード)を結ぶ「生体高分子構造研究」の強化
③21世紀に残された巨大フロンティア・脳科学研究の重点的推進
環境・エネルギー分野
◆世界を先導する環境・エネルギーCOEの育成
①アジアに貢献できる環境・エネルギーCOEの醸成
(例えば、地球環境産業技術研究機構(RITE) をCOEに)
②経済成長と環境保全の両立をめざす住宅 LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)プロジェクトの先導 (地場産業との連携)
情報通信・マルチメディア分野
◆マルチメディア技術の振興とアジアの文化・科学技術資産の保存と活用推進
①文化・科学技術資産をマルチメディア技術で世界・未来に伝える、アジアの文化・科学技術メディアセンターの設置
②情報革命を支える高精度大容量情報通信デバイスプロジェクトの強化



1997年2月 科学技術委員会