「都市進化」を目指して
関西経済同友会 都市再生委員会(委員長=中村陽三 電通 副社長)は、提言「『都市進化』を目指して」を取り纏めました。
序)-豊かな人間性を都市に取り戻すー
近代は産業革命の進展により都市への産業機能や人口の集中が進み、その受け皿となる都市空間の高度化が急速に図られた時代である。しかし、今もなお21世紀に向けてIT革命に対応した新たな都市機能、インフラを持つ都市へと変容が始まっている。
近年まで社会の価値観の目標値が経済的指標中心で語られてきた。この反省の上に立ち、これまで人類が培ってきた文化、芸術、都市景観、快適性などが生み出す心の豊かさ、生活の質(Quality of Life) が生活者にとって何よりも大切であるという価値観への回帰の動きは、覆すことができない大きな時代の流れである。
人間中心主義すなわち都市にヒューマニティを取り戻すことが、今後の都市目標となる。新しい産業をおこし経済活動の活性化を図りながら、明日の豊かさを生み出すことのできる豊かな環境を持つ都市こそが、求められる都市の姿であり、それに向けてあらゆる叡智を結集することが求められている。
[提言その1]「生活首都関西」構想
1.「生活首都関西」の理念
21世紀の世界構造が、多様な価値観を持つ文明圏が共存する多元的構造となってゆくように、日本や関西も、自立した地域のネットワークで国土や圏域が形成される多元・多極構造を持つ社会に変革していくべきである。
関西圏は、その豊かな文化・歴史資産の蓄積や特性を生かし、自立的で複数の地域の多元的なネットワークにより構成される生活文化圏とすべきである。
関西は、環日本海の拠点となる若狭地域、太平洋・東南アジアへ開かれた新産業拠点となる大阪ベイエリア、環境研究機能やビジネスの集積する琵琶湖都市連合など、複数の地域により独自に展開する多元的な、圏域構造を目指すべきである。これらのネットワークされた多様な地域の集積を生かして、圏域構造を再編し、環境制御、交通の管理制御、文化・福祉政策などあらゆる分野で、関西圏域の共生が図られる。また、種々の狭域の都市問題に対してもコミュニティのネットワークが強化されることで、自立的な生活圏の中で解決する方策も明確となる。
これらの動きが、関西全体の活力をボトムアップし、国内外とネットワークする独自の価値観を持つ地域「生活首都」を成立させていくだろう。
2.「生活首都関西」の目指すもの
生活首都とは、豊かな生活が文化、環境、経済のウエルバランスの上に成り立っている都市圏、各々のシーズへの卓越した取り組みにより進化していく都市をイメージしている。
文化面では、関西全体をつなぐ歴史的文化の底流や多様な生活文化、大学・研究機関の集積とのインターフェースなどにより、新しい文化創造の動きが進んでいく。ITを生かした地域連携の中で、文化や教育活動が地域社会で活発化するとともに、メディアアートなど先端的な文化への取り組みが育成される。関西に蓄積した文化資産のデジタル化が進み、産業と文化の融合が達成されていく。
環境面では、琵琶湖を中心とする水系や豊かな山系、海洋資源など恵まれた自然の保全や活用が図られる。保全面では、生活における環境共生システムや、都市システムの負荷の低減を狙った環境の管理制御、モニタリングシステムが構築される。また、アウトドア活動や環境教育、環境ボランティア活動が活発に行なわれ、環境文化が定着する。さらに、生活及び都市分野の先進的な取り組みが、学術研究機関や企業の集積とリンクすることで、環境技術、環境ビジネスの育成が図られる。
経済面では、関西は、ニュービジネスを次々と生み出してきた伝統を持ち、現在も豊かな産業シーズがある。こうした関西の業務・経済シーズや特性が強化され、情報産業、バイオ、環境産業など新産業が興ってくる。生活に関わる分野ではITを活用したコミュニティビジネス、教育ビジネス等が展開され、アクティビティに満ちた潤いのある都市圏が形成されていく。
これらの取り組みの結果、生活者が住んでよかったと実感できる都市圏が形成され、魅力的な生活を中心に、人材や企業が集まってくる生活首都の実現が達成される。
[提言その2]「グラン・大阪」構想 -生活首都圏関西の中の大阪一
生活首都の一つの核となる大阪大都市圏を、「グラン・大阪」として設定する。
「グラン・大阪」は、核となるメガシティ 「大阪都市圏」とそれを取り巻く他のメガシティとが、衛星都市的関係や都市機能を相補う関係により役割分担をするメガシティネットワークとして一体的圏域を形成している。
それぞれのメガシティは、構成する都市のネットワークにより、エリア特性に応じた都市経営システムと適正規模の都市圏域を確立し、住・職・遊・学機能がフルセット備わった「コンパクトシティ」型都市圏を目指す。つまり、機能的都市連携であり、必ずしも自治体合併を意味するものではない。これにより、広域問題の解決をはじめ、都市生活の質を向上させ、生活者が自らの生活の豊かさ、生活の質(Quality of Life) を実感できるような生活圏をつくり出す。
〔グラン・大阪のメガシティ]
1)生活スタイル・文化の共有性、地域アイデンティティ
2)経済構造的な連担性
3)交通体系
4)開発余力
を考慮し、現状のネットワークを生かした地域概念として以下の12のメガシティを設定する。
①大阪都市圏エリア、②大阪ベイシティエリア、③河内エリア、④阪神エリア、⑤京阪エリア、⑥南河内エリア、⑦千里エリア、⑧生駒エリア、⑨泉北エリア、⑩北摂エリア、⑪橋本エリア、⑫臨空エリア
[提言その3]大阪都市圏内特別ゾーン構想
グラン・大阪の中心的存在であるメガシティ 「大阪都市圏」は、大阪市と歴史的に一体的な役割を担ってきた「吹田、豊中、守口、松原」などの住宅型衛星都市群により形成される。
この内、とくに大阪市域は、狭域の都市問題を抱える多様なゾーンを持ちながら、市議会一つしか持たないため、民意が正確に反映されえない構造になっている。このような住民や都市活動の実態と行政区画の乖離を解決するため、特性に応じた特別ゾーンを設定して一定規模の都市スケールを確保する。
都市圏内を特別区とも表現できる独自のゾーンで構成することで、ゾーン特性に応じた業務機能、自治組織、都市構成の再編成を図り、狭域の都市問題を解決する。これにより、ゾーン内の機能のバランスを回復し、多様な世代がいきいきと暮らせるまちづくりを進める。



2000年4月 都市再生委員会