提言・アピール

うめきた2期区域開発「まちづくりの方針」作成に向けてのアピール

2014.05.08update

平成 26 年5月8日
一般社団法人 関西経済同友会

大阪まちづくり委員会 うめきた部会

大阪市長 殿 大阪市会議員 殿
大阪府知事 殿 大阪府議会議員 殿

【要旨】
うめきた2期区域開発に関する第1次民間提案募集(以下「1次コンペ」)の審査で、優秀提案として20の力作が選ばれた。今後、この20案の優秀提案者と専門家との「対話」を経て、「まちづくりの方針」や都市計画が決まり、20案の優秀提案者の中から第2次の民間提案募集(以下「2次コンペ」)で選ばれる事業者と大阪市・府が共同してうめきた2期区域開発の整備事業を行うこととなる。

当会は、平成20年以来一貫して「うめきた2期区域開発を緑と水のグリーンパークに」と提唱してきたが、世界都市を目指す大阪の命運をかけたこの重要な時にあたり、うめきた2期区域開発の今後の活発な議論とより良いまちづくりへの期待を込めて、いま改めて以下の5点を広く関係者に訴える。

  1. 「対話」の前提として、大阪市と大阪府は公園整備の方針とりわけ、公園の規模と位置を明確に示されたい。橋下市長のいう「ぶっ飛んだみどり」を実現できる規模が確保されるべきである。
  2. 「対話」は「まちづくりの方針」の作成にあたって重要な指針を得るための過程であり、応募者のアイディア、ノウハウの保護に配慮を行いながら、論点や経過並びに結果は公表されたい。
  3. 「まちづくりの方針」作成にあたる「まちづくり検討会(仮称)」(以下「検討会」)の議論の公開並びに作成過程における意思決定や判断の可視化と根拠の開示をされたい。
  4. 「検討会」のもとに、
    a.公園と民間宅地一体となったみどりのランドスケープの作り方とマネジメントの在り方
    b.市と府の資金調達方策
    c.民間事業者のみどりへの貢献に対して、区域外への容積移転などのインセンティブの付与の3点についての検討を担う専門家チームを設け、「検討会」の議論をサポートされたい。
  5. 「まちづくりの方針」や都市計画を検討する過程でのパブリックコメントは、市民の意見を早い段階から受け止め、「まちづくりの方針」や都市計画にフィードバックする実効的な体制とされたい。

【本文】

  1. みどりの創造こそが世界都市形成のラストチャンス
    今年3月、うめきた2期区域開発に関する第1次民間提案募集(以下「1次コンペ」)の審査で、20の優秀提案者が選ばれた。大阪が世界の都市間競争の中で輝く都市としての生き残りをかけたプロジェクトが始まる。

    これからの進め方は、「大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺地域都市再生緊急整備協議会」(以下「協議会」=会長・内閣総理大臣)の下に設置されている「大阪駅周辺地域部会」(以下「部会」=部会長・大阪市長)が新たに設置する「まちづくり検討会(仮称)」(以下「検討会」)が今回選ばれた20案の優秀提案者と「対話」を重ね、公と民の土地所有割合や容積などを決める「まちづくりの方針」を作る。次に、それを反映して都市計画決定がなされ、それに則り2次コンペ(事業実施コンペ)が実施される。最終的にそこで選ばれる事業者と市・府が共同でうめきた2期区域開発の事業を行うことになる。
    平成26年度末になされる予定の都市計画決定とその拠りどころとなる「まちづくりの方針」こそが、100年先にも誇れる大規模で質の高い素晴らしいみどりの「大阪セントラルパーク(仮称)」を生み出せるか否かのカギを握っているといっても過言ではない。関西経済同友会はうめきた2期区域開発については、みどりの少ない大阪のイメージを刷新し、世界の都市間競争に打ち勝つ魅力的な都市空間を必ずや創出しなくてはならないと考え、平成20年に発表した緊急提言においては「みどりと水のグリーンパークにすべきで、そのために大阪市が全域を随意契約で購入すべき」と主張して以来、一貫して「みどりのうめきた」の実現を強く訴えてきた。
    また、今回の1次コンペでは、民間提案募集の「実行委員会」の一員として、みどりの理念や提案に求められるみどりの定義、在り方を提起してきた。
    そのかたわら、うめきた2期区域開発のみどりのあるべき姿を市民とともに考えたいと、昨年9月から国内第一線のランドスケープアーキテクトや造園家に委嘱し、「都市の再生みどりと文化を考える」をテーマにサントリー文化財団、追手門学院大学地域文化創造機構との共催で連続市民公開講演会(5回)を開催した。そこであらためて、うめきた2期区域開発のみどりは都市の文明を作り変える壮大な役割を担うことを確認した。
    先般、南海トラフ巨大地震の被害想定が公表されたが、これを考慮して試算すると、1日に約250万人が利用する大阪駅周辺では、うめきた2期区域開発の道路や駅前広場を除いた敷地をすべて公園にしたとしても、広域避難場は十分ではないことから、みどりのオープンスペースの重要性も急浮上している。
    そこで、当会はあらためて、うめきた2期区域開発のまちづくりの意義を訴えたい。世界都市の顔は高層ビル群ではない。経済効率追求のために高容積の建築物を林立させてきた都市政策がいま、時代の変化の中で大きく変容している。都市を人間のくらしの舞台としてとらえ、憩いや癒しの場として、また、多彩な文化の表現の舞台として、みどりを増やし水と共生し、自然を回復していく、そんな大きな流れの中に今都市はある。都心の一等地に残された貴重な空間であるうめきた2期区域開発の17㌶をどう位置付けるかが、大阪の50年先100年先の都市像を決める。うめきた2期区域開発のみどりのオープンスペースは短期的な経済価値を求める場ではなく、新しい価値創造の苗床である。このみどりの創造を大阪の未来を創る最大のそして最後のチャンスととらえ、大阪の都市の再生に果敢に挑戦すべきである。
  2. 市・府あげて大規模なみどりの公園を
    大阪市長・大阪府知事は、用地取得財源確保の関係からか、いまだ公園の規模を明確にされていない。
    当会はこれまで「都心の駅前の一等地にあるうめきたの公園は、未来への投資であり、災害時は命を守る拠点でもある。それゆえこの公園は、圧倒的な規模の確保と質の高さが不可欠である」と主張してきた。
    橋下市長は、昨年10月に開催された1次コンペの民間提案募集要項を承認する第4回「部会」で、「この開発は目先の財政議論ではなく、100年先を考えた投資であり『みどり』を中心とした、また世界に誇れる斬新なまちづくりの中核である。民間に負担を押し付けて、市は財源負担を軽減しようとは考えていない」と述べるとともに、「2期にどんどんビルを建てて開発するのではなく、大阪の玄関口をシンボリックな空間にすることによって、周辺に波及効果を及ぼし、大阪のまちを変えていく。審査会委員には『シンボリックな』というその一点で審査をお願いする」と述べた。
    今後優秀提案者との「対話」を経て、年内には公と民の土地所有割合を定めることとなる「まちづくりの方針」が作成される予定だが、これに先立って2期区域開発の全体もしくは大部分の土地を大阪市・府が公園整備のため購入し、地下もしくは残りを民間が活用して一体開発するという枠組みで、大阪市・府が大規模な公園を整備するとの意思を明確に示さなければ、みどりの公園「大阪セントラルパーク(仮称)」とは程遠い建物が建ち並ぶ計画案に収斂しかねない。
    そこで、私たちは関係各位に次の要請を行う。大阪市長・大阪府知事におかれては、市と府が長期的、広域的視点から大胆なみどり、ぶっ飛んだみどりを実現できる大規模な公園を整備するとの決断を早急に行われることを願う。
    「検討会」の委員各位におかれては、この歴史的な役割の重みを受け止め、「まちづくり方針」の検討にあたっては、「質量ともに最大、最高のみどりのオープンスペースを創造する」ことを第一の指針とされたい。
  3. 「まちづくりの方針」作成プロセスの公開を
    今後の「対話」は現時点では非公開とされている。また、「まちづくりの方針」がどのような手続きなどで作成されるのかなどの詳細が今のところ不明である。「まちづくりの方針」という極めて重要な公共的な決断につながる「対話」の結果を非公表のままでは、到底社会の理解を得られまい。そこで、私たちは関係各位に以下のお願いをする。
    「対話」は「まちづくりの方針」の作成にあたって重要な指針を得るための過程であり、応募者のアイディア、ノウハウの保護に配慮を行いながら、論点や経過並びに結果は公表されたい。
    さらに、「検討会」は「まちづくりの方針」策定に際し、長期的、広域的、文化的、社会的公正の観点からまとめていかれるものと理解しているが、極めて公共性の高い重要事項であるため、検討プロセスは公開し、検討過程や意思決定の根拠も開示して可視化されたい。
    また、「まちづくりの方針」の作成はきわめて短期的に行われることとなっている。このため、「検討会」のもとに審査委員をトップとして、次の3つの分野別に、国内有数の専門家を構成員とするチームを設けて「検討会」の議論をサポートされたい。
    a.みどり:公園と民間のみどりのオープンスペースが一体となった2期区域開発全体の魅力的なみどりのランドスケープの作り方とマネジメントの在り方の検討
    b.資金調達方策:市・府の用地取得資金確保の方策の検討
    c.民間へのインセンティブ:民間事業者が一体的なみどりの創出に協力できるように付与するインセンティブ(例えば容積の区域外移転を可能とする空中権売却など)の検討
    なお、計画の早い段階から市民目線を反映することが求められる。とりわけパブリックコメントを募る際には、分かりやすい情報開示を行うとともに市民の意見を早い段階から受け止めて「まちづくりの方針」や都市計画にフィードバックする実効的な体制を作られたい。
  4. 終わりに
    2期区域開発の土地所有者である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)から大阪市と大阪府が随意契約で、都市公園用地への国費補助などを受けて土地を取得するとしても、数百億円に上る膨大な資金が必要となる。大阪市長・大阪府知事は起債で賄うと明言されているが、大規模な公園の実現のためには種々知恵を絞らなければならない。一方民間事業者についても公園と一体となるみどりのオープンスペースの提供や景観形成に寄与する建物が期待されるなか、事業の実現性を高めるには、区域外への空中権の売却など何らかのインセンティブ付与が必須と考える。「検討会」では大阪市・府及び民間の資金調達策を含めた先進的な事業手法を検討していただきたい。

    当会は、世界に誇れるうめきたのみどりの実現のため、今後も各界からの知恵を集め、うめきたにおける「大阪セントラルパーク(仮称)」の実現に向けて協力して行く所存である。

以上