提言・アピール等

世界をリードする情報通信ビッグバンの実現に向けて
~「民主導」による改革が高度情報化社会への扉を開く~

1998.03.25update

情報通信委員会

関西経済同友会 情報通信委員会(委員長=浅田和男 日本電信電話 副社長・関西支社長)は、提言「世界をリードする情報通信ビッグバンの実現に向けて~「民主導」による改革が高度情報化社会への扉を開く~」を取り纏めました。

はじめに

・日本型社会・経済システムはかつてわが国に高度経済成長という繁栄をもたらしたが、内的・外的環境の変化によってその維持が困難になるとともに、情報化社会の到来に
より社会の価値観が変化しつつあることから、そのシステムの見直しが迫られている。
・政府は六大改革を喫緊の重要課題として掲げ、その推進に取組んでいるところであるが、今後迎える高度情報化社会への対応といった視点が全く欠如している。このこと
は情報通信革命の到来といった歴史的大転換期に対する政府の意識の低さ、危機感の希薄さを物語っている。
・わが国がとるべき道は、情報通信革命に対して国家をあげて取組むことであり、この革命に乗り遅れることは世界との競争を放棄し衰退の途を辿ることにほかならない。
2 1世紀に向けた情報通信ビッグバンの実現が急務である。

提言

Ⅰ. 高度情報化社会の実現に向けた政府・行政の役割
提言Ⅰ-①:高度情報化社会の明確なビジョンを提示
・高度情報化社会では、情報通信技術の発達によって時間と距離の制約が克服され、企業の経済活動のみならず、市民生活に関しても世界を相手にする機会が急増することから、我々はその行動においてより一層世界との共存を視野に入れることが求められる。また、インターネットの普及等により市民サイドからの情報発信が盛んになる一方、ディスクローズされた行政情報に対しての監視、不正の弾劾が可能になることから、市民の間に真の自治意識が芽生えることになる。
・このような変化を受け、我々には「自由」「公正」「自己責任」といった価値観を持つことが求められている。高度情報化社会は自立した企業、市民によってこそ構成される必要があり、現在のわが国の仕組みのままでは対応できないことは明らかである。
・企業、市民の自立、行政の変革、インフラ整備といった前提条件が満たされた上で、工業化社会以来のモノ中心、物質至上主義から知識や情報が価値を生む知識創造社会、知価社会へのシステム変革がもたらされることになる。我々は、可能な限り今世紀中、遅くとも21世紀初頭には、以下に述べるような全ての環境整備を終えておく必要がある。

提言Ⅰ-②:「民主導」の情報通信革命を誘発するための行政による環境整備が急務
1. 情報通信ビックバンに向けた規制改革
・情報通信分野においては、今後、諸外国との協調のもと競争促進を目的とした大胆な規制改革を進めることが必要であり、米国の通信法改正に匹敵するような、いわば情報通信ビッグバンを目指した取組みに一刻も早く着手することが求められる。
・具体的には、競争のベースを世界と合わせるため、料金、サービスを認可制から届出制へ移行させ、事業区分/市場区分や一部の通信事業者に残されている外資規制を撤廃することが求められる。
・規制改革にあたっては、政策決定プロセスをオープンにするなどアカウンタビリティが重要である。また、目標とすべきゴールとその時期を明確にした上での運用が行われなければ実効があがらないことから、時間軸の設定が求められる。

提言I―②: 「民主導」の情報通信革命を誘発するための行政による環境整備が急務
1.情報通信ビックバンに向けた規制改革
・情報通信分野においては、今後、諸外国との協調のもと競争促進を目的とした大胆な規制改革を進めることが必要であり、米国の通信法改正に匹敵するような、いわば情
報通信ビッグバンを目指した取組みに一刻も早く着手することが求められる。
・具体的には、競争のベースを世界と合わせるため、料金、サービスを認可制から届出制へ移行させ、事業区分/市場区分や一部の通信事業者に残されている外資規制を撤
廃することが求められる。
・規制改革にあたっては、政策決定プロセスをオープンにするなどアカウンタビリティが重要である。また、目標とすべきゴールとその時期を明確にした上での運用が行わ
れなければ実効があがらないことから、時間軸の設定が求められる。

2. 縦割行政、裁量行政の打破
・わが国の行政そのものが抱える問題として縦割行政、裁量行政がある。縦割行政は官僚が国家ではなく自らの省や局ありきといった矮小な価値観に基づいて行動する結果であり、その弊害は情報通信行政においても随所に見られる。例えば、電子商取引、電子マネーにおいて、複数の省庁が自らの省益優先で検討を進めた結果、産業界の混乱を招きその開発が遅れるといった問題が生じている。
・わが国における悪しき慣習として行政指導が存在し、その結果裁量行政ともいうべき行政の裁量によって法規制そのものが変化する仕組みとなっており、民主導の各種取組みの阻害要因となっている。企業、市民の自立のためには早急に大胆な規制改革と並行して裁量行政から明文化行政へと転換できるようクリアな行政の仕組みを整備していく必要がある。

3. 高度情報化社会に対応した包括的な新たな法体系の整備 ~サイバー法の早期制定~
・わが国の現行法制度はいうならば工業化社会のための法律であり、高度情報化社会のための法律とは根本的に思想が異なる。現在の殆どの法律を見直さないことには、情報通信革命のもたらす利便性を享受することが出来なくなるといっても過言ではない。来るべき高度情報化社会、いわゆるサイバー社会を保障するための、サイバー法の早期制定が求められる。
・サイバー法の制定にあたっては、情報化の進展の影響が国民生活全般に及ぶことから、全省庁横断的な連携のもと包括的な取組みが求められる。情報通信技術の高度化に伴う急激な環境変化に十分対応していけるよう、基本的には柔軟な制度とすべきであるが、規制緩和の観点を踏まえ、行政の裁量範囲の拡大による実質的な規制強化とならないよう十分な注意が必要である。
・サイバー社会は無国籍の社会であることから、サイバー法制定にあたって諸外国の状況を無視して独自に取組むことは問題が多い。わが国における今後の取組みにおいても、先行事例を参考にしつつ諸外国との十分な連携のもと法整備に努める必要がある。

提言Ⅰ-③:「電子政府」の早期実現が真の行政改革の原動力
現在、求められている行政改革とは、単なる省庁の統廃合ではなく、中央省庁や地方自治体の業務、サービス内容を抜本的に変革していくことである。この実現のためには、①行政情報のディスクローズ、②行政機関の徹底したリストラ、③行政プロセスのスピード化、サービスの向上、が求められている。これらを達成するためには、行政サービスのオンライン提供や政府内業務の電子化により小さな政府を目指す、いわゆる「電子政府」の早期実現が、真の行政改革を強力に推進する有力な手段となる。

1. 行政情報の全面的なディスクローズ
・行政情報のディスクローズは、国民から信頼される公正で民主的な行政の実現のために不可欠なものであり、行政改革の重要な要素である。
具体的なディスクローズの手法については、インターネットなどを通じて国民へ広く情報発信を行うことに加え、そのコンテンツについても音声、画像、動画を利用して国民に分かりやすい表現とするなど、工夫が必要である。
・行政の裁量によって都合の良い情報のみを開示するのではなく、公開すべき情報は審議の結果、さらにはそのプロセスまでを全て公開することが重要である。情報公開が進めば、中央省庁であれ地方自治体であれ、その仕事の内容を厳しくチェックされることとなる。これにより、政策を通じ行政の評価が明確となり、各省庁間、地方自治体間の競争を促進することで、行政の効率化やサービスの向上が図られるのである。

2. 民間企業に劣らない行政機関の徹底したリストラ
・中央省庁では情報インフラ整備を急ピッチで進めているが、行政内部の業務改革、制度・慣行の見直しは遅々として進んでいない。行政機関は民間企業に学び、業務改革に本気で取組み、徹底したリストラを行うべきである。
・地方自治体においてはインフラ整備さえままならないのが現状である。行政と市民の窓口となる地方自治体の情報化が進まなければ、社会全体が真のメリットを享受できない。また、来るべき地域主権の時代における中心的な役割を担うべき自治体が充分機能していく体制づくりのために、早期のインフラ整備、業務改革、リストラの断行を求めたい。その実現にあたっては、地域主権推進のリーダーである関西が全国に先駆けて「関西版行政情報化推進基本計画」を策定し、その達成状況を客観的な評価基準のもと公開することで、市民・企業と一体となって情報化を進めていくことが求められる。

3. 行政プロセスのスピード化、行政サービスの向上
・企業は高度情報化時代に対応するため情報通信技術を最大限に活用したシステム化に取組んでいるが、行政の情報化が進まなければ、例えば許認可申請のために膨大な時間を要する問題などがボトルネックとして産業界全体の足かせとなってしまう。一刻も早く電子化による行政プロセスのスピード化を図り、産業界が国際競争力を強化できるよう環境整備を行うべきである。

Ⅱ. 高度情報化社会における企業の取組み
提言Ⅱ-①:「情報武装化」によるグローバル経営の実現
・政府、行政による取組みは、あくまでも民主導による情報通信革命を円滑に行っていくための環境整備であり、それを受けた我々産業界も、国際的な競争力を失わずに成長を続けていくための、個々の企業レベルにおける「情報武装化」が不可欠である。
・「情報武装化」の際に留意する点として、①グローバルスタンダード、②スピード、③ナレッジマネジメント、④アウトソーシング、アライアンス、⑤テレワーク、といったポイントがある。
・来るべき高度情報化社会において、わが国企業が「情報武装化」により国際競争力の強化を実現していくためには、技術革新のスピードが速い情報通信分野への投資に関して、償却期間短縮化を認めることや、税制優遇措置をとることにより、民間企業の積極的な情報化投資を行政の側からフォローしていくことも必要である。

提言Ⅱ-②:人に優しいインターフェースの追求
・パソコンに代表される現在の情報通信機器は、必ずしも全ての人々にとって使い勝手が良いとは言えず、使用する意思があっても実際に使用することが出来ない人が産み出されることにより、情報格差による情報弱者の大量発生が危惧されている。
・わが国製造業、特に家電メーカーは、基本性能の高さに加えて、使い勝手においてもアドバンテージを有していたことから世界をリードしてきた。今後、情報通信機器の製造においてもユーザ中心の視点による使い易さの発想を生かしたモノづくりによって対応することにより、パソコンも万人が使えるものになり得る。
・わが国製造業の情報化社会において果たす役割は非常に大きなものがあり、人に優しい使い勝手の良い製品の開発に対して、今後より積極的な取組みが求められる。

Ⅲ. 高度情報化社会を支える「知恵」を生み出す仕組みづくり
提言Ⅲ-①:21世紀に求められる人材を輩出するための情報化教育
・わが国が高度情報化社会のフロントランナーとして世界をリードしていくためには、自分の生きる道を「知恵」を活かして切り拓くことのできる「パスファインダー」型の人材を育成すること、また、グローバリゼーションの急速な進展から、国際語である英語によるコミュニケーション能力を身に付けた国際性豊かな人材を養成することが求められている。
・情報化教育は、高度情報化社会に必要不可欠な情報リテラシーの習得のみでなく、国際的な情報通信ネットワークを最大限活用することにより「創造性」や「国際性」を醸成していく効果が期待される。
・わが国の初等中等課程における情報化教育の現状をみると、パソコン設置率、インターネット導入率、コンピューターを指導できる教員の割合などいずれもが低く、ハード、ソフト両面において理想的なものからは程遠い状況にある。

1. パソコンのネットワーク化率の早期向上 ~「判断力」「創造力」「国際性」の醸成に向けて~
・情報化教育を推進していくためには、パソコンの設置率を向上させることに加え、ネットワーク化率を向上させることが重要である。パソコンのネットワーク化は、子供たちが主体的に情報を入手し、膨大な情報の中から必要なものだけを選ぶ「判断力」、そしてそれらを利活用していく「創造力」を養う上で大変重要である。また、海外の学校との活発な国際交流をもたらし、コミュニケーションを深めるための実践的な英語が学べたり、相手国の異なる文化・習慣・価値観を尊重しながら、自国の歴史や伝統文化を理解し主張する能力、すなわち自己のアイデンティティの確立にも極めて大きな効果がある。
・政府が昨年11月に「2003年までに全小中学校をインターネットにつなぐ」という目標を掲げたことにはある程度の評価は出来るものの、情報通信革命の進展のスピードを考慮し、今世紀中を目途に計画を前倒しして進めるべきである。

2. 教育現場への競争原理の導入 ~情報化教育における指導者の充実に向けて~
・パソコンの設置率、ネットワーク化率の向上等の環境整備を活かすためにも、教える側の体制整備が必要である。
・民間企業からの人材登用、企業をリタイアした人材の活用などを積極的に進め、さらに、初等教育課程からの遠隔授業を認め、国内に止まらず世界一流の授業を受けられる環境を整備することにより、教育現場に競争原理を導入すべきである。
・人材の受入側である企業自らの変革も不可欠である。採用方法の見直し、個性が発揮でき得る人事・雇用システムの構築などの労働環境整備を早急に行うべきである。

提言Ⅲ-②:関西・バーチャル・ユニバーシティ(KVU)構想
~「民主導」による高度情報化社会の実現に向けて~
・これまでの「官主導」「中央集権」から「民主導」「地域主権」へと変化しつつある現在、社会の構成員である市民そのものにも自立と変革が求められている。
・関西には、中世の堺の「自由自治都市」、江戸時代の「懐徳堂」や「適塾」など、市民が主体となり時代を変革、リードしてきた歴史、ポテンシャルがある。明治維新以来の大転換点である「情報通信革命」を民主導によって切り拓いていくために、今こそ、その素地を持った関西が全国に先駆けて仕掛けづくりを行うべきである。
・既存の学校教育では対応できない市民の政治意識や自治意識、カルチャーやビヘイビアを変えるために、全く新たな市民の相互教育、議論、学びの場を提供するのが関西・バーチャル・ユニバーシティ(KVU)である。
・KVUでは、インターネット等の情報通信技術を利用することにより、時間的・距離的・体力的制約を克服し、①真の民主主義を学ぶ場、②倫理・規範を学ぶ場、③地方自治に対する世論の形成の場、④政府・中央省庁に対する意見交換や提言の場などを時宜に応じて開設する。
・KVUでの講義は、それぞれの分野に精通した識者を招いたり、大学の講義をオンラインで開放するなどして、広く市民の参加を募りながら議論や意見交換の場を作り、市民の知の共有財産の形成や知の創造のための仕組みづくりを行う。また、国際化の進展に対応するために、関西の持つ歴史遺産、伝統文化などを広く情報発信することで、市民のアイデンティティ向上やアジアとの文化的繋がりを学び発展させる場を設けることも視野に入れる。
・KVUにおいて真の民主主義を学び政治への参加意識を高めた市民が、わが国の将来を担い得る政治家を数多く選出し、閉塞感が蔓延する現在の政治に一石投じることを期待したい。

以上