提言・アピール

安定的な電力確保に関する緊急要望

2011.07.21update

平成23年7月21日
大阪商工会議所 公益社団法人関西経済連合会
京都商工会議所 社団法人関西経済同友会
神戸商工会議所

具体策なき原発依存度の引き下げが国民生活・産業活動に及ぼすダメージは計り知れない。先般、菅首相は節電により当面の電力需給は乗り切れると表明されたが、こうした一貫性なき国のエネルギー政策が国民生活・企業活動に大変困難な対応を強いている点を、政府はより深刻に受け止めるべきである。

電力需給の逼迫により企業活動が犠牲を強いられる中で、関西では中小企業を中心に懸命の対応を続けている。このような状況が長引けば、震災以前からの「五重苦」(円高の長期化・重い法人実効税率・実現性の見えない温室効果ガス削減目標・労働法制の強化・通商交渉の遅れ)に新たなハンデが加わるという大変な事態に陥り、企業は日本に拠点を置くことのコストとリスクをこれまで以上に意識せざるを得ない。企業の海外流出は、わが国の産業空洞化をもたらし、著しい国力劣化を招くものと危惧している。

とりわけ西日本は、震災以降「復興支援基地」として、国全体の下支え機能を果たしてきたが、今後、再成長に向けアクセルを踏み込んでいくべき大事な時期に、電力不足が大きな足かせとなっている。

もはや政治の混乱に経済や国民生活が耐えられる限界を超えており、政府は危機感を一層強め、現実味のある短期・中長期のエネルギー安定供給につき早急に具体策を示すべきである。その際、下記諸点につき特段の配慮を払われるよう強く要望する。

  1. 定期検査後の速やかな原子力発電所の再稼働
    国民・企業にとっていま重要なことは、安価・安定的な電力の確保である。原発は安全性確保が最優先であることは自明であるが、定期検査を経た原発の再稼働をこのまま先送りされた場合、深刻な電力不足や料金高騰により国民生活や経済活動が窮地に立つこととなる。政府は電力の安定供給に対する責任を果たされたい。
    1. 定期検査を終えた原発の安全性については、政府自身が責任を持って地元自治体の理解・合意を得て早期再稼働を実現し、電力の安定供給を確保されたい。
    2. ストレステストの評価項目や手順、スケジュールなどの細目を早急に詰め、一刻も早いテストの実施と結果公表を行われたい。また、定期検査で安全性が確認された原子力発電所については稼働させながらストレステストを実施し、停止期間を極力短縮されたい。
  2. 省エネ機器等の導入促進
    企業とりわけ中小企業では既に節電を徹底しており、さらなる削減は困難である。ついては、省エネ・低炭素機器導入に際しての思い切った助成措置を創設されたい。その一環として、環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)について控除割合の大幅な引き上げを図るなど制度を拡充されたい。あわせて、省エネ・低炭素機器に関する技術開発を促進するため、研究開発費に係る控除率や控除限度額の大幅な引き上げなど減税措置を拡充されたい。なお、自家発電設備導入については、原発を含めたエネルギー政策全体の議論を踏まえたうえで助成制度の拡充や税制上の優遇措置を講じられたい。
  3. メガバッテリーの開発加速化
    電力の需給バランスを取るうえで鍵を握るのは蓄電技術である。既存電力を有効活用するため、需要のピークシフトに大きな効果が期待されるメガバッテリーの早期実用化に向けた取り組みを加速されたい。同時に、経済活動への影響を極力回避しつつ電力需要をコントロールするため、スマートグリッドなどの社会資本整備を急がれたい。その一環として、蓄電やスマートメーターなど効率的な電力供給に関する技術開発を促進するため、研究開発費に係る控除率や控除限度額の大幅な引き上げなど減税措置を拡充されたい。
  4. 再生可能エネルギー等の活用推進
    太陽光をはじめ再生可能エネルギーの活用に取り組まれたい。その一環として、メガソーラーの増設に向け設置費用の助成や固定資産税の減免など支援策を講じられたい。また、太陽光発電などに関する技術開発を促進するため、研究開発費に係る控除率や控除限度額の大幅な引き上げなど減税措置を拡充されたい。他方、バイオマス燃料の研究開発・生産・活用を促進する助成制度や税制上の優遇措置を強化されたい。
  5. 中長期のエネルギー政策指針の早期策定
    エネルギー政策のあり方は、国力を大きく左右する問題であり、現実味のある国民的議論を経ることが不可欠である。原発の着実な推進、再生可能エネルギーの活用、省エネ社会の実現などを盛り込んだ中長期のエネルギー政策指針を早急に策定されたい。その際、経済活力増進・企業の国際競争力向上の観点を十分考慮されたい。また、政府が表明している温室効果ガス削減の中期目標(2020年までに1990年比で25%削減)は一旦白紙に戻されたい。