日本の安全保障をストレートに考える
~戦略的かつ主体的意思決定と責任ある行動を~
関西経済同友会 安全保障委員会(委員長=井上礼之 ダイキン工業 社長)は、提言「日本の安全保障をストレートに考える~戦略的かつ主体的意思決定と責任ある行動を~」を取り纏めました。
問題意識
安全保障上の課題は冷戦期よりも多様で複雑なものとなっており、とりわけ日本周辺には数多くの不安定要因が存在し、世界の中で最も不安定な地域とさえいわれている。
安全保障は経済発展の基礎であり、われわれ国民の安定した生活や円滑な企業活動に直結する。経済活動のグローバル化の進展等により日本の安定を地域・世界の安定と切り離して考えることができない時代となった。米国は日本に対して基地の提供にとどまらず「人の協力」すなわち具体的に行動することを求めている。今こそ、日本は安全保障上の様々な課題を克服し、国際的に通用する新しい政策、システム、考え方を確立することが急務である。
国民の安全保障に対する意識の希薄さ: 自らの安全を他人任せにし、負担や痛みを伴う決断を回避しようとする姿勢が顕著である。
日本に対する米国の根強い不信感: 過去の危機対応の経緯から「いざという時に行動できないのではないか」という疑念が根強く残っている。
「沖縄問題イコール基地問題」ではない: 単なる基地問題にとどまらず、沖縄の歴史や基地負担から生じる複雑な感情に対する本土側の認識不足が根本にある。
提言
提言1:主体的意思決定に基づく責任ある行動を
1.日本の政策決定に戦略的で主体的な意思決定を
日本の安全・地域の安定のために日本がとるべき最善の選択を、戦略的かつ主体的に意思決定しなければならない。平時にしたたかな外交を展開するとともに、有事に際して素早く的確な判断ができるよう平時から準備しておく必要がある。解釈論からではなく、日本の最善の選択は何かという思考をしなければならない。
2.専門的人材の養成と交流ネットワークの形成を
日本が主体的に意思決定するためには政治のリーダーシップが不可欠である。同時に政治の意思決定を補佐する情報収集能力 情報分析能力を強化する体制の整備、専門的人材の養成に政治、行政、民間、大学などが多元的に取り組まねばならない。専門的人材が国内外の人と日常的に意見交換する交流ネットワークを形成し、安全保障の議論をリードしていくことが望まれる。
3. 本格的な有事法制の整備を
ガイドラインを実行可能にするための法整備は待ったなしの政治課題である。政治は引き続き有事の際の首相権限などを明確にする本格的な有事法制の検討を進め、平時に法制化しておかなければならない。有事法制は、自衛隊の即応性や信頼性を高め、シビリアン・コントロールを有効に機能させるために重要である。さらに私権の制限の範囲を明確にし、国民にどの程度有事の際の痛みやコストの負担を受け入れる覚悟を求めるかを平時から明らかにしておくことに大きな意味がある。
4. 日米が緊密な相互の情報交換を行う真のパートナーへ
日米の政策担当者は日々の情報交換をより一層緊密化することを期待する。日本がアジアの情報を米国に与え、米国がより冷静で客観的な判断を下せるようスタビライザーとして働くことが可能である。さらに有事における対応についての能動的な協議を日米政府間で制度化すべきである。また有事対応のための日米間の調整機能、日本の省庁間の調整機能を平時から確立するための努力が必要である。
提言2:ストレートな議論による国民意識と周辺諸国の信頼の醸成を
国民全体が安全保障についてストレートに議論することが国民意識の醸成につながる。そのために政府は政策の背景にある目的や意図を国民にわかりやすく説明し、国は情報をできる限り公開し、歴史教育・安全保障教育を充実すべきである。我が国存立の理念と国際社会において果たす使命 (ミッション)について議論し、明確にすることが周辺諸国からの信頼にもつながる。
提言3:沖縄の真意を理解し、継続的な交流の中から共に沖縄問題の解決を
沖縄の人々の複雑な感情は、本土の人々が沖縄の歴史や痛みを十分に理解していないことに根ざしていることを日本国民全体が認識し、日本全体の問題と捉えなければならない。そのような認識に立って、日本の安全保障や沖縄経済自立の方策を沖縄とともに考えることが重要である。関西経済同友会は沖縄との継続的な意見交換を行う機会を持ち、沖縄の意識を全国に向けて発信し、沖縄と関西が日本の安全保障を考える最先端となるよう努力したい。
以上



安全保障委員会