提言・アピール

社会保障制度改革に関する緊急提言

2001.12.01update

平成13年12月3日
社団法人 関西経済同友会

-社会保障制度改革に関する緊急提言-

長期的に安定した制度の構築に向けて、速やかなる政治の決断を

我が国の社会保障制度については、少子高齢化の急速な進行や右肩上がり経済の終焉といった経済社会構造の変化により、制度設計の前提が崩壊しており、もはや小手先の改革では対応不能の状況に陥っている。

次のように様々な局面で制度疲労を起こし、国民の不信が顕在化してきている現行制度については、抜本的な見直しが求められているにもかかわらず、関係者間での利害調整に手間取り、問題の先送りが繰り返されている。

  • 厚生年金では、財政再計算の都度、保険料率のアップや支給額のカットといった「負担増と給付減」が繰り返されてきた。
  • 国民年金では、未納者・未加入者・免除者が制度対象者の3割を占め、いわゆる空洞化が進行している。
  • 医療保険においては、歯止めなき医療費の増加、特に老人医療費の増加は、老人保健制度への拠出金負担を通じて、健保組合の7割を赤字に転落させるなど、健保財政に危機をもたらしている。
  • 介護保険については、発足当初から第1号被保険者の保険料負担を減免するといった「特別措置」がとられたことをはじめとして、既に、制度導入の理念と運営実態の乖離が生じてきている。

本年4月に、聖域なき構造改革を掲げる小泉内閣が誕生し、社会保障制度改革の機運が盛り上がっているものの、既得権益を守ろうとする勢力の抵抗にあって、その行方は混沌としている。

当委員会は、一昨年に「医療保険制度改革に関する緊急提言」を発表した。その中で、後世代にツケを回すことなく、今すぐ抜本改革の道筋をつけるべきであり、そのためには関係者が等しく痛みを分かち合う姿勢を持つことが必要であると強調した。以来、一貫してこの基本認識に立って活動してきており、今夏には、公的年金制度について、改革の痛みを受ける国民、特にサラリーマン層の声を収集する観点から、「公的年金に関するアンケ-ト」を実施し、現行制度に対する意識や今後のあり方を探ったところである。

本緊急提言は、以上のような経緯も踏まえ、約2年半にわたる活動の成果としてとりまとめたものである。