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提言・アピール

震災より3年を経た被災地の現状報告
~2つの風(記憶の風化、風評被害)を防ぎ、関西と東北の持続的な関係構築を~

2014.05.07update

2014 年(平成 26 年)5月
一般社団法人 関西経済同友会

東日本大震災復興支援委員会

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震、津波に加えて原子力発電所事故も併発した複合災害であり、東北の太平洋側を中心とした広い範囲で、死者15,884人、行方不明者2,633人、全壊棟数40万棟、被害総額16.9兆円(内閣府試算)という大きなダメージを与えた未曾有の大惨事であった。大震災より3年間、復興に向けた様々な取組がなされてきたが、津波被災地を中心に住宅整備やまちづくりなど、本格的な復興はこれからが正念場である。

一方で、メディアで被災地の現状を目にする機会は減少しており、被災地外の地域では大震災の記憶が風化していくことが懸念されている。また、福島第一原発の所在する福島県を中心に、いまだ誤った情報に基づく風評被害が残っている。震災の復興には長期にわたる持続的な支援が必要であり、人々の記憶を風化させないためにも、今後の復興を展開するための情報を発信していくことが重要である。

当委員会は、大震災から3年目となる2013年に、関西経済同友会として阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、(1)「震災の記憶の風化」と「誤った情報に基づく風評被害」という二つの風を防ぎ、(2)遅れている産業や生活・コミュニティの復興の一助となるとともに今後の息の長い持続的支援に繋げていくこと、を目的に発足した。

委員会の具体的な活動としては、2度の講演会(講師:日本政策投資銀行地域企画部、宮城復興局)や2度の被災地視察(第1回:宮城県~岩手県視察、第2回:福島県視察、各一泊二日)を実施した。特に被災地視察では延べ39名の方にご参加頂き、行政、地場企業、NPO法人、まちづくり協議会など様々な方の意見を聞き、被災地の抱える課題を多角的に把握し、関西企業ができる連携や支援策を検討した。実際に、複数企業が復興マッチングイベント「結の場」へ参加するなど、委員会活動を受けた具体的な行動も見られた。

現地へ赴くと、津波で建物が流され未利用のまま放置されている土地、いまだに多くの方が仮設住宅に住むことを余儀なくされている状況、福島県において避難指示区域となり住民が戻れない街などを目の当たりにし、被災地は多くの課題を抱え復興途上にあることを強く感じた。かかる状況下、被災地の方々からは、記憶の風化や誤った情報による風評被害、来訪者が今後途絶えていくことを恐れており、被災地外の企業と持続的な win-win の関係を結びたいとの声が寄せられた。阪神・淡路大震災を経験した関西地域がビジネスなどを通して継続的に被災地に関わっていくことは、一日も早い復興の一助となると考えられる。

被災地は、日本の地方が共通に抱える課題である過疎化・人口減少・高齢化・産業空洞化などが、震災により加速しており、まさに我が国における「課題先進地域」である。被災地視察では、「コンパクトシティ」の考え方に基づく街づくり事業や、震災を契機とした太陽光発電事業や農業の6次産業化など、被災地において新しい事業にチャレンジしていく方々にお話をうかがうことができた。被災地復興に向けた様々な取り組みは、日本が今後直面するこれらの課題に向き合うための先進事例となるだろう。

本報告書は、当委員会の一年間の活動を報告し、関西地域の企業に対して東北被災地の現状と課題を伝えることを目的として作成した。当委員会の活動はこの一年間で終了するが、関西経済同友会として、引き続き被災地との接点をもち続けていくことを期待している。

平成26年5月

東日本大震災復興支援委員会委員長 小柳治