国際社会の平和と安定を主導すべく、我が国は信頼に基づく外交力を発揮せよ
関西経済同友会 安全保障委員会(委員長=三紀ホールディングス 杉野利幸 代表取締役社長)は、提言「国際社会の平和と安定を主導すべく、我が国は信頼に基づく外交力を発揮せよ」を取り纏めました(提言本文は当ページ下段のPDFに掲載しております)。
1.問題意識
世界情勢は、かつてなく複雑化し、不確実性が増大している。ウクライナ戦争、ガザ紛争は予断を許さぬ状況である。歴史が証明する通り、一度戦争や紛争が起きれば終結後も怨嗟や火種は残り、さらなる対立へと連鎖するリスクを伴う。この「負の連鎖」を完全に防ぐことは、国際社会、我が国にとって喫緊の課題である。
当会は、日々の経済活動は安全の確保、平和の維持が前提との認識で、1970年代に安全保障委員会を設置した。以来、「自分の国は自分で守る」「有事を絶対に起こさぬための外交力と防衛力の強化」などを念頭に活動を続けている。我が国は、戦後、アジアのなかで自由と民主主義を掲げ、世界から信頼される国家としての礎を築き上げてきた。その強みを最大限に活用することが重要である。
これら認識のもと、今回、日本独自の外交力を高め、防衛力向上に取り組み、これらを支える国民意識をいかに醸成すべきか、提言を取り纏めた。
2.提言
1.「自由・民主主義・人権・法の支配」を主導する戦略的な外交を
(1-1)自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のビジョン推進を
(1-2)各国からの信頼の源泉として「人間の安全保障」推進、ODAの増強を
(1-3)国内外の“知日派”“親日派”育成、ならびに日本人研究者の海外派遣の強化を
2.防衛力強化のため、担い手や産業基盤、法制度などの整備を
(2-1)自衛隊員の処遇改善、採用間口の拡大、官民連携の強化と、防衛産業の基盤強化を
(2-2)日米同盟の深化、米軍基地の有事対応力向上のため、地位協定の適切な運用に向けた活動の継続を
(2-3)防衛施設などの機能維持のため、重要土地の所有と利用の適正化を
3.「Total Defense」の考えを広め、国民の防衛意識の向上を
・自然災害や安全保障上の危機への対処を統合した「Total Defense」を広め、防衛意識を高めるべき。
このほか、我が国では、人口減少や経済力の相対的低下など、「静かなる有事」は既に進行中である。人口減少の緩和、経済力や技術力、情報力の向上にも死活問題として取り組むことが絶対不可欠である。
今年は戦後80年に当たる。世界各地で戦争・紛争が続く一方で、我が国では戦争の記憶が薄れつつある。大阪・関西万博が開催されている今、絶え間ない対話と相互理解を通じて諸外国などとの信頼関係を構築するとともに、「いのち」の尊さを再認識し、外交・安全保障政策に反映させることが重要である。
以上
一般社団法人関西経済同友会
安全保障委員会