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うめきた再開発~「ほんまもんのみどり」実現を一貫して提唱
2017年5月31日
IR(統合型リゾート)の実現、まちづくり

うめきた再開発~「ほんまもんのみどり」実現を一貫して提唱

■効率一辺倒のまちから都市の誇りとなるみどりのまちへ
JR大阪駅の北側に隣接する梅田貨物駅跡地を中心とするうめきた地区(約24㌶)、かつて梅田北ヤードと呼ばれていた地区は先行開発区域、2期開発区域に分けられ、先行開発区域(約7㌶)については平成16(2004)年12月に土地区画整理事業、道路などの都市計画決定が行われた。翌17年10月には大阪駅北地区都市再生着工記念式を開催、同時に「ナレッジ・キャピタル・コア」施設の入居希望者募集が開始された。
先行開発区域は後にグランフロント大阪(GRAND FRONT OSAKA)として開業するが、その開発が進められるなか、本会の梅田北ヤード研究会は平成20年より梅田北ヤード委員会(委員長 篠﨑由紀子 都市生活研究所 代表取締役)と名称を改め、2期区域開発にかかわる取り組みを開始した。先行開発区域をまちづくりの観点から見た場合、切り売りが回避されて一体型の開発が行われた点は大いに評価できるが、土地取得費がネックとなって当初のコンセプトが活かしきれなかったという反省がある。すでに平成18年2月の時点で大阪市は先行開発区域の容積率を200%から最大800%に緩和することを決定、20年2月には都市計画審議会において容積率をさらに上乗せする都市計画案が可決された。
こうした状況のなかで梅田北ヤード委員会は、未来につなげるまちづくりを改めてアピールするために、20年9月、「大阪駅北地区第2期開発区域についての緊急提言〜『緑と水』のグリーンパークの実現を〜」をとりまとめた。
大阪のまちづくりにあたって何を最大の魅力とするかといえば、グリーンパーク(大規模緑地空間)であると提言では強調した。そもそも大阪市には公園が少なく、1人あたりの都市公園面積は3・5平方㍍程度と政令指定都市および東京23区のなかで東京23区に次いで低い。梅田北ヤードの2期開発区域は約17㌶に及び、もしここを大阪市が買い上げて緑あふれる空間にすれば世界的にもインパクトを与え、大阪を訪れた者が持つ「緑が少ない」という印象を払拭することも可能だ。そこで住み働く人々はもちろんのこと、観光にも大きな影響を与える。
提言では先行開発区域の反省点を踏まえ、多大の予算を必要とする大阪市の負担を軽減するためにグリーンパークの実現に必要な資金調達手法についても提案を行った。まず国の補助対象となる都市公園事業として整備すること、市所有資産の流動化を活用して、土地購入や整備費に充てること、ネーミング・ライツを導入する、個人や企業の寄付を募る、地方債の発行、市が持つ施設におけるESCO(Energy Service COmpany)事業収益を管理・運営費に充てることなどである。
11月には平松邦夫大阪市長を訪ねて提言を説明し、土地取得と整備を要請したが、市長からは財政上の問題から直接取得は困難との見解が示された。短期的なソロバン勘定では財政の論理が働くが、長期的には大阪の利益ははかりしれない。一方で平成21年末に日本サッカー協会が2018、2022年ワールドカップ招致を視野に入れた8万人収容のスタジアム構想を発表し、大阪市はこの実現に向けて努力することに同意した。他の経済団体が賛同するなか、本会は「うめきたはみどり」にこだわった。

■学生らからモデル図を公募、グリーンパーク発信
 平成22年12月に梅田北ヤード委員会は、「知の拠点は、さらに、みどりの拠点に。−グリーンパークの実現に大阪市のリーダーシップを−大阪駅北地区2期開発への提言」を発表した。グリーンパークのような広いオープンスペースはそれ自体が採算をとれるような性格のものではなく、民間企業が直接的にかかわっていくのは困難である。行政が公的な観点から主体的にかかわり、民間事業者と協同して進めていくことが望ましい。提言では市がリーダーシップをとってこの都市の未来を広げる事業を進めることの意義を強調し、新たにモデル図を提示することとした。モデル図の作成に当たっては本会の考えるグリーンパークのイメージを元にして、未来を担う学生や若手都市景観デザイナーを対象とする公募方式を採用。都市環境デザイン会議関西ブロック有志(井口勝文氏・千葉桂司氏・齋藤彰良氏)の募集協力を得て、大阪芸術大学大学院チーム、京都造形芸術大学大学院チーム、アール・アイ・エーチーム、LY designチーム、鳳コンサルタントチームの計5チームの応募を得ることができた。実際に目に見えるモデル図という形で提言を発表したことは大きな関心を呼び、本会の提唱する「みどり」の構想はメディアにも広く取り上げられた。
また、グリーンパークの用地取得については、先行開発区域の方法を踏襲すれば鉄道建設・運輸施設整備支援機構より譲渡を受けることとなるが、大阪市は随意契約で、民間事業者には特区の措置で企画競争入札を行うべきであると提案した。大阪市の用地取得費については、市は市域に約6兆円相当の土地を保有している。未利用地の売却など保有資産の利活用によって資金を捻出すべきだと主張した。
提言を発表した平成22(2010)年12月には国際サッカー連盟でワールドカップの開催地を決める投票が行われ、日本は落選した。これによって市の提唱する大規模スタジアムの建設計画は、最大の根拠を失うこととなった。平松市長はなおスタジアム建設にこだわる姿勢を見せたが、一方で橋下徹大阪府知事は緑地化に賛意を表明した。
翌23年1月に梅田北ヤード委員会は、「北ヤード2期の魅力ある都市空間創造に向けて」と題してシンポジウムを開催した。シンポジウムには先のモデル図を作成した5チームが参加し、プレゼンテーションを行った。なおこの際は、すでに市長よりスタジアム構想の撤回が発表されていた。知事の緑地化構想の支持表明と合わせ、グリーンパークの実現にようやく曙光が差し始めた。

■新市政により大きく前進
平成23年2月2日、大阪駅北地区まちづくり推進協議会によって公募されていた大阪駅北地区の名称が、応募作品数3000余のなかから「うめきた/梅北」と決定した。この年はうめきたの開発に当たってエポックとなった。
同年11月27日に大阪市長選挙が行われ、本会は立候補予定者に公開質問状を作成したが、この回答のなかで市長に当選した橋下徹氏が「ニューヨークのセントラルパークをイメージした『大阪セントラルパーク(仮称、以下同)』を造成する」とした。同氏の回答は大規模災害時の避難先としての機能も持たせる、運営については市が民間事業者とともに用地取得して開発するか、あるいは総合特区制度を利用して市に代わる第三者が関与する、民間資本を最大限活用して計画を進めるなど、本会の主張をほぼ丸ごと飲み込んだものとなっていた。
翌24年3月に梅北委員会(委員長 篠﨑由紀子 都市生活研究所 代表取締役)は、「梅北を世界に誇れるみどりの玄関に〜松井知事、橋下市長への期待〜」をとりまとめた。知事、市長が「セントラルパーク」の実現を大阪の未来都市戦略の一つに据えたことについて賛同の意を示し、取得費の捻出についてTIF(Tax Increment Financing/固定資産税等の税収増を担保とする債券)やレベニューボンド(指定事業収益債)などの導入を提案した。
大阪府市統合本部が24年6月にまとめた「グランドデザイン・大阪」では、大阪の将来について圧倒的なみどりで都市を覆い、風格を醸し出すことを打ち出していた。うめきた2期区域のまちづくりについては、国の関係行政機関の長および大阪府知事、大阪市長、経済団体、民間事業者などの参加者からなる大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺地域都市再生緊急整備協議会のもとに設置する大阪駅周辺地域部会を中心に検討が進められることとなった。24年9月に開催された第1回大阪駅周辺地域部会で松井一郎大阪府知事と橋下徹大阪市長は、17㌶のうめきた2期区域を緑化し、その効果で周辺部の価値を向上させていくことを唱え、土地取得財源については府・市が地方債を発行することを明言した。2期区域の緑化がほぼ既定路線となったわけである。
本会の大大阪委員会(委員長 小柳治 日本政策投資銀行 常務執行役員関西支店長 〈梅北部会 部会長 篠﨑由紀子 都市生活研究所 代表取締役〉)は平成24年11月に「梅北2期の公園としての都市計画手続きをすみやかに」をアピールとしてとりまとめ、大阪府・大阪市幹部に手交した。状況がここまで推移すれば、次に急がれるのは公園としての都市計画手続きである。都市公園や防災公園にすれば国から用地費の3分の1が補助される。また鉄道建設・運輸施設整備支援機構との随意契約や割賦取得、都市再生機構の防災公園街区整備事業の活用などを提案し、府・市の負担軽減策を盛り込んだ。
さらに個人や企業、団体から幅広く寄付金を募ることにもふれ、パークマネジメント費用を負担・支援する仕組みとしてコミュニティ財団の設立を提案した。金額の多寡にかかわらず幅広い層が参加して、「大阪セントラルパーク」をともに作り出していくムーブメントを起こし、将来の圧倒的なみどりにつなげていくよう期待したのである。

■市民との連携を求めて連続講演会を開催
平成25年4月26日、うめきた先行開発区域にグランフロント大阪がオープンした。約7㌶のスペースにうめきた広場、南館、北館(2タワー)、オーナーズタワーから成り、北館には産官学の「知」の交流を謳うナレッジキャピタルが置かれた。グランフロント大阪はオープン後11日間で367万人の来場者を記録するなど、上々の滑り出しを見せた。
同年の9月から本会では「都市の再生〜みどりと文化を考える〜」をテーマに、市民に公開した連続講演会を開催した。うめきた2期区域の開発計画が具体化しようとするなか、多くの市民に都市とみどりの関わりを考えてもらおうとしたもので、サントリー文化財団ならびに追手門学院大学地域文化創造機構の協力を得て共催で行った。
第1回(平成25年9月12日) 「地球社会の環境ビジョン・都市の緑から緑の都市へ」 進士五十八氏(東京農業大学 名誉教授・元学長)
第2回(同年10月2日) 「都市間競争 シンガポールのみどりと水の国際戦略」 稲田純一氏(元シンガポール国立公園庁計画開発部長・北京清華大学客員教授・ウイン代表取締役)
第3回(同年11月12日) 「新しい公共空間創造とみどりの都市デザイン」佐々木葉二氏(京都造形芸術大学 教授)
第4回(同年12月11日) 「都市魅力を高める花とみどり—美の文明論」 白砂伸夫氏(神戸国際大学経済学部 教授)
第5回(平成26年1月9日) 「都市経営とみどり」 涌井雅之氏(東京都市大学環境学部 教授)
第6回(同年6月30日) 「大阪大都市圏における都市緑化の役割とあり方」増田 昇氏(大阪府立大学大学院生命環境科学部 教授)
第7回(同年7月23日) 「うめきたに人間性回復のみどりを」 石川幹子氏(中央大学理工学部 教授)
連続講演会は当初、5回開催の予定だったが、市民に好評で想定を上回る来場者があったため、後に2回を付け加えた。この連続講演会の概要は専門誌「ランドスケープデザイン」(平成26年4月号)にうめきた特集として掲載されるなど、幅広い層から大きな反響があった。連続講演会を進めているなか、25(2013)年10月にはうめきた2期区域の開発について、民間提案募集(第1次コンペ)の受付けが開始された。

■第2次コンペに向けて「公開」を求める
民間提案には40の応募があり(国内23・海外17)、このうち総合的に優秀な10提案、プランニングやデザインなどが優秀な10提案が、平成26年3月に決定された。その後のスケジュールとしては、これら優秀提案に選ばれた20者と専門家との「対話」を経て、「まちづくりの方針」や都市計画が決まるということになった。最終コンペである第2次民間提案募集はこの20者に参加資格があり、そこで選ばれた事業者と府・市が共同してうめきた2期区域のまちづくりが進められていくことになる。
第1次コンペの結果を受けて、本会の大阪まちづくり委員会(委員長 福島伸一 新関西国際空港 取締役会長)のうめきた部会(部会長 篠﨑由紀子 都市生活研究所 代表取締役)は平成26年5月に、「うめきた2期区域開発『まちづくりの方針』作成に向けてのアピール」をとりまとめた。
圧倒的なみどりによって大阪を世界都市に押し上げていこうという構想の実現に当たって、案の絞られてきたこの時期は非常に重要な意味を持つ。さらに活発な議論によってより良い「まちづくりの方針」がつくられることを期待したいが、懸念となる点がないわけではなかった。専門家との「対話」が行われるというが、これは非公開となっていた。
アピールはまず前提として、大阪市と大阪府には公園整備の方針を、とりわけ公園の規模と位置を明確に示すよう求めた。圧倒的なみどりにはそれ相応の規模が確保されていてしかるべきである。また「対話」は、後につくられる「まちづくりの方針」の重要な指針になると考えられる。「対話」に参加する事業者のアイデアやノウハウの保護にはもちろん配慮しなければならないが、論点や経過、その結果については市民に公表することを期待した。「まちづくりの方針」はいずれ大阪駅周辺地域部会のもとに設置される検討会でまとめられることになっていたが、その議論は公開し、意思決定の根拠を開示していくことを求めた。このほかアピールでは、市民の意見を早い段階から受け止めて、「まちづくりの方針」や都市計画にフィードバックしていく体制の構築を訴えるとともに、検討会の下に以下の専門家チームを設置するよう次の提案を行った。
1、公園と民間宅地が一体となったみどりのランドスケープの作り方とマネジメントの在り方
2、市と府の資金調達方策
3、民間事業者のみどりへの貢献に対して、区域外への容積移転などのインセンティブの付与
これら専門家チームの活動により、検討会の議論を実効的にサポートしていく体制の構築を訴えた。

■「公園はできるだけ大規模に」と緊急アピール
うめきた2期区域のまちづくりは、先述の大阪駅周辺地域部会を中心に検討が続けられていた。グランフロント大阪のオープンに先立つ平成25年4月に開催された同部会の席上で部会長を務める橋下市長から、本会に対して2期区域でのみどりのあり方について検討するチームを立ち上げるよう要請があった。本会はこれに応えて同年7月に有識者による「みどりの専門部会」を設置し、検討を重ねていった。
同専門部会の報告は、26年9月の大阪駅周辺地域部会において行った。その内容は、2期区域の道路を除く約9㌶について、可能な限りのすべてを「ほんまもんのみどり」即ち「本物の緑地」とすべきであるというものであった。人工地盤に植えられた樹木では本物の緑化にはならない。薄層の緑化にとどまり、うめきたの理念に反するのみならず、永続的かつ多大な維持管理費が必要となる。世界都市を目指そうとする大阪にとっては、本物のみどりが必要である、と報告した。
ところで、うめきたの開発についてしばしば取り上げられてきた論点の一つに、みどりは利益を生むか否かというものがある。利益の意味を大きく解釈するならば、これは多くの人が考えているとおりである。人間には、まちには、緑は欠かせないものである。経済的という意味に絞るなら、みどりの定量的な価値評価は非常に難しいといえる。この点、みどりの専門部会報告と同じ9月にうめきた・みどり推進委員会(委員長 篠﨑由紀子 都市生活研究所 代表取締役)が行ったシンガポール視察は示唆に富むものであった。シンガポールはよく知られているように、"City in a Garden"として都市の緑化政策を国を挙げて打ち出しており、同国の国立公園庁で都市政策における緑地整備の位置づけや手法などについて聞いた。シンガポールでは地域開発においてまず緑地を整備し、そのうえで周辺部を開発する。先に行う緑地整備で周辺の価値を高め、より質の高い開発を推進しようとしているという。みどりの価値評価については定量的整備効果・波及効果の把握が難しいため特に行っておらず、整備対象地区周辺を網型に区切って地価の変化を調査しているということだった。
国立公園庁の担当者の話では、シンガポールは徹底したプラグマティズムの政府であり、利益にならないことはしない。リー・クアン・ユー首相の強いリーダーシップによって推進された都市の緑化という見る人によって見解の分かれる問題についての一つの回答をシンガポールの事例から学んだ。
平成26年11月、先に述べた検討会において、うめきた2期区域についての「まちづくりの方針案」が固まった。「みどり」の広さは、地区全体で概ね8㌶、うち概ね4㌶を市と府が整備する公園に、残り概ね4㌶を民間事業者が整備していくこととなった。
本会のうめきた・みどり推進委員会はこうした推移を受け、12月に、「うめきた2期の公園はできるだけ大規模に」と題して緊急アピールをとりまとめた。民間事業者が整備することとなる概ね4㌶については建築物と一体となった「みどり」となっている。しかし、これでは用地費や整備費について民間事業者に負担を負わせることになり、そもそも建築物の建て替え時には消滅する恐れすらある。府と市においてはもう一段の努力を期待し、さらに多くの用地を取得して公園整備を進めることがより良い「みどり」の実現につながると要望した。
アピールは市長、知事、市会および府議会の各議員宛に送付するとともに、同月開催された大阪駅周辺地域部会でその趣旨を説明した。大阪の都市の格をあげていくという目的には、今回が最大のチャンスとなる。後世の人々から昭和の御堂筋、平成のうめきた公園と並び称されるように、長期的な視点で公園の拡充を強調した。この公園の規模について、橋下部会長は同部会の席で、「できる限りの大部分を本物の緑地とすべきという関西経済同友会の提言や働きかけを受けたもの」と発言した。
その後、この方針案は正式な「まちづくりの方針」となり、まちづくりの目標に「みどり」と「イノベーション」の融合拠点を掲げることが決まった。第2次コンペへの準備が大詰めを迎えるなか、平成28(2016)年10月に、関西広域インフラ・うめきた委員会(委員長(うめきた担当) 篠﨑由紀子 高麗橋サロン 主宰)は、吉村洋文大阪市長に向けた要望書「『質の高いみどり』の議論を望む」をとりまとめた。市民参加と透明性のある議論を、うめきたの「みどり」をつくりあげていくプロセスにおいて実現してほしいと求め、吉村市長に提出した。
直近10年における本会の活動を振り返ると、「大阪にみどりを」と訴えた提言は相当程度実現に至ったと考えられる。途中、梅田北ヤード跡地のスタジアム化という、我々の主張と真っ向から対立する構想が出てきたこともあったが、4・5㌶の都市公園整備が決定したことは、大きな成果である。
今後とも本会はうめきた2期開発区域の推移を見守りつつ、フォローアップ活動を通して大阪のより良い「みどり」の実現に努力をしていく。